EU、ウクライナ東部被占領地でのロシア国籍証明書の大量配布を非難

欧州連合(EU)は、ウクライナ東部ドネツィク・ルハンシク両州一部地域(CADLR)住民にロシア連邦国籍証明書を大量配布することは、ミンスク諸合意の目的に反する行為であり、将来の同地のウクライナへの再統合プロセスを妨げるものだとの見方を示した。

27日、ウィーンの欧州安全保障協力機構(OSCE)常設理事会会合の際に発表された、ロシアによる対ウクライナ侵略・クリミア違法占領に関する声明に書かれている。

EUの声明には、「私たちは、違法併合下クリミア半島や、ロシアが支援する武装集団の支配下にある地域(編集注:CADLR)において、簡素化され、選択的な手段でウクライナ国民に大規模かつ加速してロシアのパスポート(編集注:国籍証明書の意)を発行していることを非難する。そのような手段は、ウクライナの主権をさらに侵害し、ミンスク諸合意の目的に反し、将来の再統合プロセスを妨げるものである」と書かれている。

さらにEUは、ロシアが署名したミンスク議定書(編集注:ミンスク諸合意の1つ。2014年9月5日署名)には「三者コンタクト・グループ(TCG)がウクライナ、ロシア連邦、OSCEで構成されることが明記されている」ことを喚起し、「そのため、ロシアは、紛争の平和的解決とミンスク諸合意の履行に義務的責任を明確に負っているのだ。私たちは、ロシアによる自らをいわゆる『ウクライナ内戦』の仲介者だとするナラティブを断固として否定する。私たちは、ロシアに対して、紛争の当事者として、ノルマンディ・フォーマットとTCGの議論に建設的に参加し、ミンスク諸合意を完全に履行するよう要請する」と強調した。

2019年4月24日、ロシア連邦のウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ東部のドネツィク・ルハンシク両州被占領地域(CADLR)在住の住民を対象に、ロシア国籍を簡略的手続きで取得することを可能とする大統領令に署名していた

ゼレンシキー政権は同日、同大統領令はロシアが「占領国としての責任を認める」ものだとし、「これら行為は、国際社会にとっては、ウクライナに戦争を展開している侵略国ロシアの真の役割を改めて直接確認できるものとなっている」と発表していた

しかし、同年7月、ロシア連邦のプーチン大統領は、このロシア国籍付与の簡素化措置をウクライナ東部ドンバス地方の占領地域居住の住民だけでなく、同地方全域のウクライナ住民に対して適用する大統領令に署名していた

今年1月、ウクライナのクレーバ外相は、ロシア連邦がウクライナ東部の被占領地の住民にロシア国籍証明書を違法に配布していることを喚起し、国際社会はそれを根拠とする新たな対露制裁を発動すべきとの考えを示していた