中国特別代表、「ウクライナ危機」解決のための3回目の外遊実施
中国外交部は10日、李輝中国政府ユーラシア問題特別代表(元駐ロシア大使)が5月初旬に「ウクライナ危機の政治的解決」を目的とした3回目の外遊を行い、トルコ、エジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦を訪問したと発表した。
中国外交部広報室が伝えた。
発表には、5月3日から9日にかけて、李代表がトルコ、エジプト、サウジアラビア、アラブ主張国連邦を訪れ、各国の外務次官や安全保障担当首脳補佐官と会談したと書かれている。
また、同代表は、同外遊に前後し、ブラジル、南アフリカ、インドネシア、カザフスタンなどの国々の政府関係者と電話会談も実施したという。
加えて発表には、「中国は『ウクライナ危機』(編集注:中国政府による露宇戦争の呼称)に関する様々な当事者との踏み込んだ意見交換を行い、当事者は、中国が提示した情勢緩和を求める以下の提案に概ね同意した」と書かれている。
中国は今回、緊張緩和を目的として、戦場の不拡大、紛争の非激化、全ての当事者による相互の大規模砲撃の抑制という、3つの原則の遵守を呼びかけたという。
さらに中国は、「ウクライナ危機」の唯一の可能な解決策は協議であるとし、紛争当事者は直接対話回復のための条件を作り、停戦達成へと情勢緩和を促進すべきだと主張している。
その他中国は、被害を受けている地域への人道支援の拡大を呼びかけ、そのために紛争当事者に民間人・民間施設への攻撃を回避し、女性、子供、その他の犠牲者を守り、捕虜の基本的人権の尊重を要請している。中国は、捕虜の交換を支持しているという。
また中国は、核・生物・化学兵器の使用に反対し続けており、原子力発電所などの民間各施設への武力攻撃に対抗しつつ、原子力事故を防ぐために「原子力の安全に関する条約」やその他国際法の遵守するよう呼びかけている。
加えて中国は、エネルギー、財政、食料貿易、輸送などの分野の国際協力、石油・ガス、電力施設、海底光ファイバーケーブルといった重要インフラの安全確保、世界の産業・サプライチェーンの維持を支持するよう提案している。
その上で中国は、「全ての当事者が引き続き意思疎通と調整を維持し、同時に、停戦と戦闘の集結、和平のための協議を促進する上での建設的な役割を共同で担うための情勢緩和を支援する国際社会の努力を歓迎することで合意した」と伝えた。
なお、中国政府は、外務省の毎日の記者会見を含め、これまで李特別代表の外遊につき発表していなかった。中国の中央国営メディアも本件に注意を向けていなかった。