ウクライナ、保護目的にクリミア・ハン国時代のハンの宮殿のユネスコ世界遺産入りを進める

ウクライナは、被占領下クリミアのバフチサライ市にあるクリミア・ハン時代の「ハンの宮殿」を保護するために、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産リストと同時に危機遺産リストへの登録申請に必要な作業をしている。

17日、タマーラ・マズール文化次官が記者会見時に発言した。ウクルインフォルムの記者が伝えた。

マズール次官は、「バフチサライについてだが、私たちは、先ほどユネスコに関する国家委員会の特別会議から戻ってきたところである。会議では、バフチサライの宮殿の問題についても議論された。現在、ウクライナは、この宮殿のユネスコ世界文化遺産リストへの登録を進めるための作業をしている。なぜなら、現在この宮殿に対しては、『改修』と呼びつつ、実際には違法な建設作業が行われており、これにより宮殿が相当破壊されているからである。現在も、被占領下クリミアにおいて、この私たちの遺産に対する破壊行為は継続している」と説明した。

同次官は、既にユネスコによるクリミア自治共和国領内の直接監視メカニズムについての合意が得られているとし、「監視は、包括的なものになる。しかし、同時に、ユネスコが取る手法は、これまでユネスコが行ったことのない、新しいものである。そのため、現在、ウクライナはユネスコと監視の要素について調整している。つまり、監視をどう行うか、専門家はどのようにしてその地の監視対象へのアクセスを得るか、である。しかしながら、いつ専門家が、どのようにしてクリミア領内に監視目的で入域するかについて話すのは、時期尚早である」と発言した。

また、同次官は、今年、ユネスコの専門家がウクライナを訪問するとし、「キーウ(キエフ)あるいは、クリミアに近い場所の訪問となろう。監視に関係する問題を議論するためである」と説明した。

これまでの報道では、クリミアにおけるロシア占領政権が、バフチサライ市の「ハンの宮殿」の改修を開始し、その際に、宮殿施設の一つであるモスクの屋根の瓦(かわら)を詳細な分析なく変更したり、宮殿の外装や内装を変更したりし、宮殿の保存状態を害していることが判明している。また、宮殿の主要施設の周辺に、鉄骨建築物が建てられており、これにより地盤沈下の恐れが生じていることが指摘されている。さらに、墓石や宮殿の壁に刻まれた文字などが保護されていない他、木造部分をコンクリートに代える作業も確認されている。

バフチサライの「ハンの宮殿」とは、世界で唯一、クリミア・タタール式宮殿建築物として残っているものである。ロシアによるクリミア占領の前に、同宮殿は、ユネスコの暫定文化遺産リストに加えられ、保護対象となっていた。