ウクライナ正教会モスクワ聖庁、露宇戦争につき母なる教会であるロシア正教会のキリル総主教へ「不同意」表明
27日、ロシア正教会(モスクワ総主教庁)を母なる教会とする、ウクライナ正教会モスクワ聖庁の聖会議は、キリル・モスクワ総主教によるロシア・ウクライナ戦争に関する立場への不同意を表明し、同教会の完全な自立・独立を決定した。
ウクライナ正教会モスクワ聖庁がウェブサイト上に5月27日のキーウにおける聖会議の決定を公開した。
決定には、「私たちは、全ルーシ・モスクワ総主教キリルのウクライナにおける戦争に関する立場への不同意を表明する。会議は、ウクライナ正教会運営憲章への関連の追記と変更を採択した。これらは、ウクライナ正教会の完全な自立と独立を示す」と書かれている。
また聖会議は、今回の戦争は、聖書の教えに反くものであるとして非難するとし、戦争の被害を受けた全ての人への同情を表明した。さらに、ウクライナとロシアの政権に対して、「協議を継続し、流血を止め得る強力かつ懸命な言葉の模索」を要請した。
これを受けて、コンスタンティノープル総主教庁を母教会とする独立ウクライナ正教会の対外関係局副局長を努めるイェウストラチー大主教は27日、モスクワ聖庁派の「不同意」発表はロシア正教会との繋がりの断絶は意味しないとフェイスブック・アカウントにコメントした。
イェウストラチー氏は、「『ウクライナ正教会(編集注:モスクワ聖庁)会議』総括は、エピファニー(編集注:独立ウクライナ正教会)首座主教の主教会議における談話の言葉を用いて端的に評価できる。『大きな雲からの小雨』だ。(中略)(モスクワ聖庁派の)ロシア侵略に関する表現は、最大限柔らかく、穏便なものだ。(中略)戦争について言わなければいけないこととして見出された言葉は、40単語だけである。そして、侵略の基盤となった『ロシアの世界』イデオロギーへの評価や、そのイデオロギー拡散における自ら(モスクワ聖庁派)の役割についての評価も一切ない。キリルの立場に『不同意を表明する』というのは、つまり、非難はしない、関係の断絶もしない、単に『不同意を表明』しているだけなのだ」と書き込んだ。
また、同氏は、ウクライナ正教会モスクワ聖庁聖会議はが教会の独立を意味する「アウトケファリヤ(автокефалія)」という言葉を用いなかったことを指摘し、「『憲章の掃除』は、正式名称から『モスクワ聖庁』との言葉がなくなるだけのことであり、モスクワ総主教庁の管轄に残っていることを隠す試みである」と指摘した。同氏は、オヌーフリー・ウクライナ正教会(モスクワ聖庁)総主教がキリル・モスクワ総主教の名前を今後典礼時に読み上げるかどうかわからないとも指摘した。
同時に、同氏は、今後の(独立)ウクライナ正教会とウクライナ正教会(モスクワ聖庁)が対話を行うための前提条件として、これまでのロシア正教会の立場を引き継がないことを明確にする必要があると指摘した。