ゼレンシキー宇大統領のクリスマスのメッセージ
ウクライナのゼレンシキー大統領は12月24日、全面戦争開始から2回目となるクリスマスに合わせ、国民に向けてメッセージを発出した。ウクルインフォルムが全訳する。
親愛なる民よ!
何百万人のウクライナ人がの今日の夜空にて、キリスト生誕を告げる最初の星が現れるのを待っている。多彩な色合いを持つ祝いだ。大きな教会の祝い。重要な民の祝い。家族の祝い。いつも子供が好み、大人が待つ祝い。心を光で満たすクリスマス。いつも希望を贈るクリスマス。
クリスマスのもう1つの形、もう1つの次元を私たちが知ることになってから、もう2年目となる。それは「全面戦争下のクリスマス」というものだ。そのクリスマスは、異なる気持ち、文脈、異なる後味を持つ。
家族の夜も平時とは異なる。なぜなら、私たちの皆が家にいるわけではないからだ。皆に家があるわけではないからだ。食卓にどのような料理が並んでいるかより、どのような人がそこに並んでいるかの方がはるかに重要となった。彼らが近くにいる時間がどれだけ貴重なことか。
今そばにおらず、ウクライナを守っている人と連絡が取れることがどれだけ大切なことか。メッセージが届いて、読まれたということを意味する、既読の「小鳥」をモニター上で目にすることがどれだけ嬉しいことか。それへの返事を受け取ることがどれだけ大切なことか。
私たちのプレゼント、価値、伝統も変わった。今日、自分の住まいをどのように飾るかは、それほど大切ではなくなり、自分の家を守ること、家からごみを片付けること、敵を自分の家から追い出すことが大切となっている。夜空に最初の星を見つけた時に、そこに敵のミサイルや「シャヘド」がないことに気付くことが、どれだけ嬉しいことか。
私たちの何百のクリスマスキャロルと3つの言葉「空襲 警報 解除」が鳴り響くことがどれだけ嬉しく、心地良いことか。
私たちの願いも変わった。子供たちの願いも変わった。「お父さんが早く仕事から家に帰ってきて欲しい」というシンプルなありふれた願いから、「お父さんが帰ってきて欲しい」に変わったのだ。
全ての父親、夫、兄弟、祖父、母、妻、姉妹が戻ってきますように。勝者となって戻ってきますように。今日手に武器を抱えて、聖夜を塹壕で迎える、敵を迎え撃っている人々皆が戻ってきますように。私たちの光の戦士たち全員が。ウクライナの天使・守護者の皆が。毎日、善が勝つこと、光が勝つこと、強い心、強い信心を持たねばならないことを証明してくれている人たちが。奇跡が存在することを証明してくれている人々が、戻ってきますように。しかし、私たちは、奇跡を自分で作り出さねばならない。それを自分の手で築かねばならない。不可能を可能にせねばならない。
毎日私たちは、彼ら一人一人のために祈っている。戦争の終わりを祈っている。勝利を祈っている。
それを今日も行っていく。どこにいようとも。どこでクリスマスを迎えようとも。今日は、ウクライナ人皆が一緒だ。私たち皆がクリスマスを一緒に迎えている。一つの日付で、一つの大きな家族として、一つのネイションとして、一つの、唯一の国として。そして今日、私たちの共同の祈りはかつてないほど強固なものとなる。民の祈りだ。今日、それは何百万の声を統べる。かつてなかったほどに。そして、今日、祈りは、2週間という時間の差なく、響く。欧州と世界とともに響いていく(編集注:ウクライナ正教会とウクライナ・ギリシャ・カトリック教会は、今年から暦を修正ユリウス暦へと変更し、クリスマス(生誕祭)は今後は1月7日ではなく、12月25日となると発表していた)。
これは、人のため、平和のため、正義のため、命のためのユニークな祈りだ。そして今日、その祈りは、地球上の様々な場所で響き、様々な人の心から、様々な言語で発されていく。異なる信仰の人からさえもだ。なぜなら、それは命のための祈りなのだから。その祈りに国境はない。
困難な時、自分の大地と自分の心を守っている時、私たちは自由への道を拓く。精神面の独立を含む、完全な独立確立の道だ。私たちの信心の奴隷イデオロギーから自由となる道だ。人間的なものや、聖なるものの何もない、暴力、侵略、憎悪を運ぶカルトからの自由だ。安全と平穏を壊し、他人の大地と人の命を奪う、しかし、敗北するカルトからの自由。それは信じる力、真実の力、法の力、公正の力、私たちのウクライナの私たちの力によって破られるのだ。
私は今日、キーウ・ペチェルシク大修道院にいる。荘厳で象徴的な私たちの大修道院に。
ウクライナの歴史、私たちの文化、宗教、正教、東方キリスト教会全ての1000年のシンボルだ。私たちの不屈の力、強靭性、困難な挑戦、それを克服し、繰り返し再生し、成長する能力の証拠である。
歴史の中で、この場所は多くの衝撃と攻撃を経験してきた。破壊、冒涜、略奪。オルド、ナチス、ソヴィエト期。この場所は、制圧され、焼かれ、破壊されてきた。しかし、誰も一度たりとも、この場所を完全かつ永遠には破壊できなかった。大修道院は再生するために常に耐えてきた。そして、攻撃がある度に、単に再生するのではなく、より大きく、より強くなっていった。なぜなら、ここは人々にとっての力の場所であったのであり、今もそうあり続けているからだ。人々にとっての希望と精神の源だからだ。信じる人全てにとっての。真実の勝利、ウクライナの真実の勝利を信じる人全てにとってのだ。
クリスマスの前の数日は、一年で最も夜の長い時期だ。しかし、明日からは、日が長くなり始め、光が勝ち始める。光はより強くなる。そして、少しずつ、1日ずつ、闇は負けていく。
そして、最後には、闇は負ける。悪は敗れる。今日、これが私たちの共通の目的、共通の夢なのであり、そのために今日、私たちの共同の祈りがあるのだ。私たちの自由のための。私たちの勝利のための。私たちのウクライナのための。平和な年の平和なクリスマスに、皆が家に集まれる日のために。そして、互いにこう言うのだ、「キリストが生誕した!」と。
親愛なるウクライナ人よ! 私は、あなた方皆に対して、クリスマスを祝う! あなた方の心の中に信心の光が輝き、心が希望の光で満たされ、家庭に愛と反映がもたらされますように。
私たちの先祖がかつてこう述べ、歌った。「空と大地が生まれますように。空には星を、大地には花を。神のご加護を!」
そして、今日私たちがこう述べる。「私たちのウクライナが生まれますように。勝利と平和とともに。神のご加護を!」
親愛なるウクライナの民よ、おめでとう。「キリストが生誕した! 彼を讃えよう!」