「水も薬も医薬品もない」 マリウポリ市から脱出した記者、惨状を語る
18日、マリウポリ市に滞在し、3日前に避難できたミコラ・オシチェンコ記者がテレビ出演時に発言した。
オシチェンコ記者は、「ほぼ3週間、水の供給が途絶えており、水は、きれいなものも汚いものもない。1週間前、人々は暖房システムの水を汲んで、沸騰させて飲んでいたが、本当はそんなことは絶対してはいけない。水を汲むことのできる地点がいくつかあるが、そこまでの道へ行くには、死体を飛び越えて、砲撃の下を進まなければいけない。その地点への道は(砲弾が)飛び交っているからだ。私たちは、雪が降った時、とても喜んだ。それをバケツに集めて、いわゆる『室温』で溶かした。というのも、室温は屋外よりほんの少しだけ温かい程度だからだ。バケツに、しっかり詰めた雪から、これぐらい(編集注:5〜7センチを手で示す)の水が作れた。それが数日分だ」と発言した。
さらに同記者は、街中には食べ物が2週間以上なく、店に残っていた物は値下げ価格で売り捌こうとしていたが、その店もその後砲撃を受けたと伝えた。
「医薬品もない。糖尿病、高齢者が薬を持っていないのだ。おむつもない。小さな子供が、2週間半、3週間、体を洗えずにいる。街は不衛生で、ごみが溢れている。一般人の死体が通りに転がっており、もはや誰もどこにも運ばない。野良犬が人の死体を食べ始めている。それは危険である。なぜなら、犬が人肉の味を覚えてしまったのだから。死体がなくなったら、彼らは生きた人に向かうかもしれない」と発言した。
同氏はさらに、少なくとも35万人がマリウポリ市に残っているとし、その多くは自家用車を持たず、町からの脱出手段がないと指摘した。人によっては、徒歩で脱出を試みているという(編集注:隣のマンフシュ町(人口8000人)まで約20キロ、ベルジャンシク市までは約95キロ)。マリウポリ市民は互いに助け合っており、残された物を分け合い、水を子供や高齢者のために残しているという。
なお、ロシア侵略軍は、ウクライナ東部マリウポリを包囲し、人道災害を引き起こしている。ウクライナ軍の抵抗が強力なことから、敵は民間人への爆撃や、人道回廊利用の妨害をしてきた。マリウポリ市議会は、3月14日時点で同市の民間人死者数は2357人に上ると発表している。
ウクライナのアレストヴィチ大統領府長官顧問は18日、現時点でロシア軍による東部マリウポリ市の包囲を解除することは不可能だとし、ウクライナ政権は政治・外交的手段の作業をしていると発言した。