オランダにてマレーシア航空MH17便撃墜事件公判再開 判決は冬の見通し
被告の4名(ロシア国籍者3名、ウクライナ国籍者1名)は、これまでの公判同様、誰も出廷しなかった。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。
原告側のオランダ検察官テイ・ベーハー氏は、「本事件には、写真、動画、衛星写真、傍受された会話記録、捜査上の実験からの説得力あるデータといった証拠が多くある。これは判決を下すのに十分である」と発言した。
ベーハー氏はまた、7年9か月29日前、ウクライナ東部でMH17便が撃墜されたことを喚起し、この悲劇の犯罪者は、イーゴリ・ギルキン(ストレルコフ)(ロシア国籍)(ロシア連邦保安庁(FSB)元将校、いわゆる「DPR」元国防相)、セルゲイ・ドゥビンスキー(ロシア国籍)(将軍、(当時)ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)大佐、いわゆる「DPR」元情報総局(GRU)局長)、オレグ・プラートフ(ロシア国籍)(GRU中佐)、レオニード・ハルチェンコ(ウクライナ国籍)(「DPR」側で戦闘に参加)の4名だとし、彼らこそが地対空ミサイルシステム「ブーク」の搬送と戦闘での使用に関与していたとみなされていると伝えた。
さらにペーハー氏は、原告側は公判にて、プラートフ被告とドゥビンスキー被告、ハルチェンコ被告につき、彼らの関与を確認する、通信傍受された3名の会話の一部を再生してみせた。
リダーベックス検察官はまた、撃墜にブーク以外の他の武器が使われたことを示すような痕跡は一切見つからなかったことを改めて強調した。同氏は、同便がブークで撃墜されたことは多くの証拠で確認されていると指摘した。
同事件の遺族を代表するシェインス氏は、最大の補償額は各遺族に対して4〜5万ユーロとなるべきだと発言しつつ、同時にいかなる補償も最も親しい人を失ったことを補償することはできないとも述べた。
ステインハユス裁判長は、今のところ裁判所は本件の具体的な判決日を発表することはできず、判決までの時間がどれぐらいかかるかわからないとしつつ、他方で、以前言及された2022年9月22日という予定日に判決を行うことはできないと発言した。同裁判長は、今年11月17日か12月15日に判決が下される可能性があると伝えた。
MH17裁判の公判の開催は、5月16〜18日、6月8〜10日に予定されており、明日17日も開かれる。
マレーシア航空機撃墜事件とは、2014年7月17日、アムステルダムからクアラルンプールへ向かっていたマレーシア航空機MH17がウクライナ東部ドンバス地方上空で武装集団により撃墜され、乗客・乗員合計298名全員が死亡した事件をいう。
2016年9月、国際共同捜査チーム(JIT)は、同事件の技術捜査の結果として、同航空機が、親露武装集団支配地域から地対空ミサイルシステム「ブーク」により発射された弾頭「9M38」により撃墜されたことを判明させている。
同時に、民間調査グループ「ベリングキャット」は、MH17を撃墜した「ブーク」がロシア軍第53対空旅団発のものであることを判明させていた。ベリングキャットは、ソーシャル・メディアとオープンソース情報の独自の分析を通じて、MH17撃墜に関与した20名のロシア軍人を特定させた報告書を発表した。これら軍人の名前が写真付きで示されているこの報告書は、オランダの検察に渡されている。
2018年5月24日には、JITは、MH17を撃墜したロシアのミサイルの破片を公開しつつ、ミサイルがロシアのクルスクを拠点とするロシア軍第53対空ミサイル旅団に属するものであることが判明したと発表した。
なお、2019年6月、マレーシア航空機MH17撃墜事件の捜査を行う国際共同捜査チーム(JIT)は、同撃墜に関与した容疑者4名(イーゴリ・ギルキン(ロシア国籍、ロシア連邦軍元将校、ロシア連邦保安庁(FSB)元大佐)、セルゲイ・ドゥビンスキー(ロシア国籍、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)大佐)、オレグ・プラートフ(ロシア国籍、予備大佐)、レオニード・ハルチェンコ(ウクライナ国籍))を公表している。
MH17の公判は、2020年3月に始まっている。
2021年9月2日、JITは、撃墜に用いられた地対空ミサイルシステム「ブーク」の搬送元であるロシアの都市クルスクにおける、証拠となる写真、動画、公的文書などの情報提供を呼びかけるメッセージを発表していた。