宇南部ヘルソン州で露はプロパガンダを強化 住民への効果は低い=専門家
23日、アンティペンコ記者が近東研究センターとウクルインフォルム編集部が共同で開催した分析セミナー「占領下のヘルソン州 統治、プロパガンダ、弾圧」の際に発表した。
アンティペンコ記者は、現在ウクライナの報道機関によるヘルソン州の被占領地の出来事についての報道が減少傾向にあると指摘しつつ、「同時に、ロシアは、ヘルソン州におけるメディア・プレゼンスと影響力を高めている。被占領地にいる人々の情報面の孤立を回避すべく、ウクライナはより熱心に活動すべきである」と発言した。
同時に、「報道調査センター」のコベルニク調査員は、ヘルソン州におけるロシアのプロパガンダ効果は極めて低いとの見方を示した。コベルニク氏は、ロシア占領政権はヘルソン州住民に対してテレビ、ラジオ、新聞を使ってプロパガンダを拡散しようとしているが、同時に圧倒的多数の住民はインターネットを通じて情報を得ていると発言した。
同氏は、対敵協力者が作ったテレビチャンネルが得ている視聴者は非常に少ないと指摘した。他方、同氏は、ヘルソン州住民にとってより大きな脅威は、占領者が以前から存在したメディアに対して圧力をかけて、報道内容を変えさせていることだと発言した。
ヘルソン市出身のバラ氏は、ロシアのプロパガンダメディアが地元の人々から「支持」を得ているかのように示すための映像作りの手段について説明した。バラ氏は、友人と一緒に、制圧されたヘルソン市にてマイダン革命時の英雄の写真が破壊される瞬間を目撃したと伝えた。その際、占領者は地元の若者たちに対して拉致や暴力を行うと脅し、彼らにその写真の破壊を行わせた上で、その様子を動画に撮り、その動画を後ほどインターネットで公開していたと説明した。
同州カホウカ出身の記者のバトゥーリン氏は、自身のロシア軍に拉致され、監禁された経験について報告した。またバトゥーリン氏は、ヘルソン州へのロシア軍の侵攻の際、東部での反テロ作戦参加者たちは占領の際の脅威を甘く見ていたと発言した。さらに、地元政権も状況はコントロール下にあるとして住民に落ち着くように伝えるばかりで、何をすべきか、どのように隠れるべきかの説明がなかったとし、その結果、時間が無駄になってしまったと指摘した。
同氏はさらに、ヘルソン州にてロシア占領政権は粛清と略奪を行っており、住民の圧倒的多数は、ウクライナ政権の到達を待っていると発言した。
なお、2月24日のロシア軍のウクライナに対する全面的侵略により、現在ウクライナ南部では、ヘルソン州とザポリッジャ州の一部がロシアにより占領されている。占領開始当初は、両州各地で住民による反占領集会が盛んだったが、ロシア軍人よる地方自治体関係者、記者、教師、活動家、聖職者などへの拉致、略奪、拷問などの被害が相次ぎ、次第に反占領集会の頻度は下がっていた。
4月24日、英国防省は防衛インテリジェンスの報告として、ロシア軍にとって、クリミアとの陸上回廊の確立とウクライナ南部の支配という目標達成における重要な町となっているとの見方を示した。
4月27日、ヘルソン市では、住民たちが偽「住民投票」とロシア占領に反対する親ウクライナ集会を開催していた。
5月6日、タシェヴァ・クリミア自治共和国ウクライナ大統領常駐代表は、ロシア占領者は、ウクライナ南部の新たに占領した領土をクリミアに併合させてあらたな行政区を作る可能性を含め、占領地統治に関する複数の案を検討していると指摘していた。
ヘルソン州議会のソボレウシキー副議長は5月11日、占領者や共謀者によるヘルソン州地位に関するいかなる行動も法的に無意味であるとコメントした。