ロシア軍、ザポリッジャ原発の総裁を拘束
ムラショウ総裁の拘束については、10月1日にウクライナの原子力発電公社「エネルホアトム」社がコチン同社総裁の声明をテレグラム・チャンネルにて掲載した。
声明によれば、ムラショウ・ザポリッジャ原発総裁は9月30日16時ごろ同原発の位置するエネルホダル市へ向かっている際にロシア軍に拘束されたという。ムラショウ氏の乗っていた自動車が止められ、同氏が拘束され、目隠しをされたまま不明な方向へと連れ去られたのだという。
声明には、ムラショウ氏はザポリッジャ原発の核・放射線セキュリティの唯一の責任者であると伝え、同氏の拘束は同原発使用に危険を生み出すものだと指摘されている。
1日、ウクライナ外務省もまた、ロシア軍による今回の拘束は国家テロであるとし、ロシアに対して速やかな解放を求める声明を発出した。
ウクライナ外務省は、今回のムラショウ総裁の拘束は違法なものであるとし強く非難した上で、その犯罪行為はロシア国家テロの現れかつ国際法の著しい違反であると指摘した。また、「ロシアはザポリッジャ原発総裁を速やかに解放すべきだ」と強調した。
外務省はまた、国連、国際原子力機関(IAEA)、G7をはじめとする国際社会に対して、ムラショウ氏解放に向けて断固とした行動を取るよう要請した。
さらに声明には、ザポリッジャ原発の非軍事化と脱占領、並びにウクライナへの管理の返還に向けた国際社会の努力を緊急かつ最大限に動員することが、現在の核安全分野の脅威の排除の唯一の手段だと書かれている。
外務省は、ロシアに対する圧力の強化を期待していると強調した。
1日、IAEAは、本件について、IAEAは今回のムラショウ総裁拘束の情報を得た後、関係機関に連絡したと発表した。また、グロッシーIAEA事務局長は、今回の拘束の迅速かつ納得のいく解決への期待を表明した。
加えてグロッシー氏は、今回のムラショウ氏拘束につき、「そのような原発人員の拘束は、それ自体が重大な懸念材料であるだけでなく、他の人員に対する心理的影響や圧力となる。それは原子力安全とセキュリティにとって有害だ」と述べた。
さらに、同氏は、ムラショウ総裁がプラントの原子力安全とセキュリティを確保する責任を負っているとし、彼が原子力安全、作業員の放射線安全、核セキュリティに関連するものを含め、発電所のすべての運転手順が実施されていることを確認しているのだと指摘、さらには現場での原子力緊急事態への対応を主導していると説明した。
グロッシー氏は、「このような形で彼が職務を離れることは、原発の安全とセキュリティを確保するための意思決定にも直ちに深刻な影響を与えるものだ」と強調した。
その上で同氏は、ムラショウ氏が安全かつ速やかに家族のもとに戻り、原発での重要な職務を再開できるよう希望を表明した。
さらに、1日、ザポリッジャ原発に滞在するIAEA専門家から、原発周辺で再び複数の爆発音が聞こえたとの報告があったと報告されている。それは今週IAEAが報告した前回の爆発と同様、地雷によるものと思われるとしつつ、この爆発は、原発の安全およびセキュリティ・システムに直接的な影響を与えるものではなかったと書かれている。同時に、グロッシー氏は、原発の近くでそのような爆発が繰り返されていることへの懸念を表明した。
また、グロッシー氏は、同原発周辺の原子力安全圏設置の合意・早期実施に向けた協議などを続けているとし、来週キーウ(キエフ)とモスクワを訪問する予定であることが発表された。
画像:エネルホアトム