西側諸国がクレムリンに抵抗するために資源を動員すればロシアは戦争に負けるだろう=戦争研究所
ISWが6月20日付報告にて伝えた。
報告には、「ISWは、西側諸国がクレムリンに抵抗するために資源を動員したら、ロシアはウクライナにも西側諸国にも勝つことができず、おそらく負けるだろうと評価し続けている」と書かれている。
ISWは、6月中旬にウクライナのパートナー国が共通の戦略をまとめ、戦争の望ましい戦略的帰結を定めるためにいくつかの重要なステップを踏んだと指摘し、6月16日の「グローバル平和サミット」の際に採択されたコミュニケにて、80以上の西側諸国や国際機関の高官がウクライナの永続する平和の基盤として同国の主権と領土一体性を支持する原則的な立場を確立したと喚起した。
また6月13日には、ウクライナが米国と日本との間で10年間の安全保障協定に署名し、また多くのパートナー国がG7とラムシュタイン・フォーマットの中でウクライナに対する長期的支援を再確認したことも指摘されている。
そしてISWは、「プーチンの戦争に勝つための戦略は、米国、欧州連合(EU)、ウクライナの国際同盟国を惑わし、ウクライナへの支援を停止させ、国際法の重要な原則である、国家主権と領土一体性不可侵を断念させるクレムリンの能力に依拠している。ウクライナでの戦場でウクライナがロシアに勝つことを可能にするための同盟国の戦略的明確性とコミットメントは、プーチンの重力の中心と同盟国の意思決定者の決定を形成する彼の能力を大きく弱体化させている」と指摘している。
さらにISWは、プーチンが最近、西側がウクライナがロシアに勝つことを可能にしたら、核兵器を使うことを暗に述べて脅迫したことを指摘し、それは国際社会によるまとまったウクライナ支援の戦略的ビジョンを損なわせることを目的にしたものだと評価した。そして、ISWは、プーチンはとりわけロシアのウクライナにおけるあり得る戦略的敗北を「ロシア国家の終わり」だとし、さらに戦場での敗北は、ロシア国家の「1000年の歴史」の終わりを意味するのであり、ロシアは「最後まで」戦う方が良いとも発言したことを喚起した。
その上でISWは、「プーチンのレトリックは、ウクライナにおけるロシアの侵略をロシア主権を巡る存亡をかけた戦争かのように意図的に見せており、プーチンは、ウクライナの同盟国がロシアの対ウクライナ侵攻の敗北という共通の戦略的目的を達成することを抑止するために、ロシア軍が前線で敗北する場合には核兵器を使う権利を留保していることを暗示するべく、核兵器使用のための閾値を下げる可能性に言及したのかもしれない」と分析している。
同時にISWは、プーチンの核威嚇はクレムリンの核脅迫キャンペーンの一部であるとし、そのためそれが実際の核のエスカレーションに繋がる可能性は非常に低いと評価している。
さらにISWは、「ロシア連邦のウクライナにおける戦略的敗北は、ロシアの主権と領土一体性に脅威をもたらすものではない(ただし、プーチン政権の安定性は脅かすかもしれない)」とも指摘している。
そしてISWは、核エスカレーションの脅威は今後もロシアの諸外国意思決定者の認識を操作する能力の中核的資産であり続けていくだろうと評価している。