ウクライナの全原発が予防措置として電力生産を低減=IAEA
国際原子力機関(IAEA)のグロッシー事務局長が11月28日付の報告にて伝えた。
グロッシー氏は、ウクライナの現在稼働している原子力発電所となるフメリニツィキー原発、リウネ原発、南ウクライナ原発が、同国における大規模な軍事行動の際の予防措置として、発電水準を低減させたとし、これは過去2週間弱の内に2度目のことだと伝えた。
また、ウクライナで活動するIAEAの2つのチームが、空襲警報の際にシェルターへの避難を余儀なくされたと書かれている。
稼働中の原発には、合計で9基の原子炉があるが、いずれも出力を低下させたとし、またリウネ原子力発電所は、送電網から切り離されたと報告されている。
フメリニツィキー原発は2本の送電戦との接続を失ったが、いずれの原発も外部電力供給を受けているという。
グロッシー氏は、「ウクライナのエネルギー・インフラは極めて脆弱で、原子力の安全性は大きなリスクに晒されている」と伝えた。そして、「私は改めて、主要な原子力施設やそれらが依存するその他の施設が位置する地区では最大限の軍事的抑制を要請する」と呼びかけた。
同時に、原発への直接の被害に関する報告はないが、しかし、IAEAはウクライナから、原子力発電所が送電と受電の両方に使用している変電所に再び攻撃が及んだとの報告を受けたという。
これらの変電所は、8月を含め、これまでの攻撃の際にも被害を受けたことが報告されている。
グロッシー氏は、IAEA理事会で先週、IAEAのチームが8月の攻撃の後には、9月と10月に状況評価のためにウクライナ全土の原発の外に位置する7か所の変電所を訪れており、その際著しい被害を発見したとし、エネルギーシステムがウクライナの原発の信頼できるオフサイト電力供給を確保する能力は、著しく低減しているとの結論に至ったと伝えたという。
同氏は、IAEAは引き続き、原子力の安全に重大な意味を持つ施設や送電線への攻撃の被害の程度の評価を続けると発言した。また同氏は、「IAEAは、この悲劇的な戦争における原子力事故のリスクを軽減するために、全力を尽くしていく」と伝えた。
なお、グロッシー氏は、自身の発言の中で、ウクライナのエネルギー・インフラへの攻撃を行ったロシアの名前を一度も挙げていない。