ベニス委員会、ウクライナ憲法裁の判決を批判
ベニス委員会ウェブサイトに緊急見解文書が公開された。
同文書の結論部分には、憲法と憲法秩序の尊重の観点から憲法裁判所の役割は尊重されねばならないとあるが、同時に、憲法裁判所は憲法安定性のために手続きを守るべきであり、自らの管轄範囲内で判決を下すべきだと指摘されている。
とりわけベニス委員会は、ウクライナ憲法裁判所の第13-r/2020判決(編集注:2020年10月27日付判決)は、明確な根拠に欠け、国際法における強固な基盤もなく、裁判官の利益相反の疑問が晴れていないと指摘した。委員会は、同判決がウクライナの汚職との闘いに否定的影響を与えるのみならず、憲法正義への公の信頼を弱めるであることから、遺憾なものだとコメントした。
同時にベニス委員会は、いずれにせよ憲法裁判所の役割は尊重されねばならないとし、最高会議(国会)は、同判決を履行しなければならないが、ただし、その際、国際スタンダードや、汚職との闘いのような公的利益を維持しつつ履行すべきと指摘した。その上でベニス委員会は、最高会議に問題解決に向けた複数の具体的勧告を提示している。
また10日、ベニス委員会のブキッキオ委員長は、ツイッター・アカウントにて、ウクライナ憲法裁判所の判決を「遺憾である」と指摘した。
Ukrainian Constitutional Court decision is “regrettable”; financial declarations system for public officials, including judges, must be kept. https://t.co/SyvUiFeBkS
— Gianni Buquicchio (@giannibuquicch1) December 10, 2020
また、委員長は、裁判官を含む公人を対象にした資産申告システムは維持されねばならないとも強調している。
なお、ベニス委員会は、今回の発表の他、憲法裁判所改革に関する結論文書も近日中に発表する予定である。
これに先立ち、ウクライナの憲法裁判所は10月27日、誤った資産申告の責任を定める刑法典366−1条と汚職防止法の複数条項を違憲とする判決文を公開。これを受け、国家汚職防止庁(NAPC)は、オンラインで公開されていた政権高官資産公開サイトへのアクセスを遮断した。電子資産申告は、欧州連合(EU)がウクライナ国民への査証免除付与の条件にするなど、2014年以降の汚職対策改革の主要な成果の一つとみなされていた。
ゼレンシキー大統領は11月20日、ベニス委員会のブキッキオ委員長と電話会談を行い、現在ウクライナで生じている憲法裁判所危機の迅速かつ効果的な解決に向け、均衡ある包括的解決策の模索のための協力を要請していた。