米独、ノルド・ストリーム２問題で共同宣言発表 ウクライナ支援表明
２１日、ドイツ連邦政府ウェブサイトに、「ウクライナ、欧州エネルギー安全保障、環境目標のサポート」と題された米独共同声明が掲載された。
声明には、「米国とドイツは、ウクライナの主権、領土一体性、独立と同国が選んだ欧州の道を断固として支持している。今日、私たちは、ウクライナ内外でのロシアの侵略とロシアの破壊的行動に対する方策を確認している」と書かれている。
両国は、ロシアに同国の侵略と破壊的行動に制裁発動やその他の手段の行使によって責任を負わせなければならないとの点で意見が一致していると伝えた。また両国は、ロシアのエネルギーを武器として使用する試みを含め、侵略・破壊的活動への対応として、米ＥＵの手段・メカニズム利用の調整を行うべく、最近開設されたロシアに関する米ＥＵ対話や二国間チャンネルを通じて、協力することを約束している。
声明には、「もしロシアがエネルギーを武器として利用しようとしたり、ウクライナに対してさらなる侵略行為を行おうとしたりした場合には、ドイツは、一国レベルで行動し、また欧州連合（ＥＵ）に対して、ロシアの欧州に対するガス関連を含むエネルギー分野の輸出能力を制限する制裁を含む、効果的な方策や、その他経済的に重要な分野における効果的方策の行使を呼びかけていくことになる」と書かれている。
その他、ウクライナや中東欧諸国のエネルギー安全保障への支持が強調されており、ＥＵ第３域内市場エネルギーパッケージにある、エネルギー供給源の多様化・供給の安全性の基本原則を含むものだと書かれている。その上で、ドイツは、ノルド・ストリーム２に関しても第３エネルギーパッケージの表現・精神を維持していくと表明しており、そこにはＥＵエネルギー供給の安全性に関するリスク評価が含まれると書かれている。
米独は、ウクライナを通じたガス輸送が（編集注：現行のウクライナ・ロシア間合意の有効期限である）２０２４年以降も継続されることがウクライナと欧州の利益に適う点で意見が一致していると伝えた。そのため、声明には、ドイツは、そのウクライナとロシアとのガス輸送合意を１０年間延長することを確保すべく、あらゆる影響力を行使する義務を負うとあり、その目的のために特使を任命すると説明されている。ガス輸送の延長合意の協議は、できるだけ早く開始しなければならず、今年９月１日以前に始められるべきと書かれている。また、その際、米国は、その努力を完全に支持すると約束している。
米国はまた、ドイツとフランスによるノルマンディ・フォーマットにおけるウクライナ東部の平和達成の努力を支持していると指摘した。ドイツはまた、ミンスク諸合意履行確保のために、同フォーマットにおける自らの努力を活性化させていくと伝えている。
さらには、声明には、米独は、発展途上国におけるエネルギー移行をサポートすることを中心的関心時とすることに決めたとあり、「私たちはまた、ウクライナや中東欧のその他の国の支援に集中していく」と書かれている。その際には、本件は、気候変動との闘いのみを促進するものでなく、欧州のエネルギー安全保障を促し、ロシア発のエネルギーへの需要を減らしていくものだと指摘されている。
ドイツはまた、ウクライナのエネルギー移行、エネルギー効率、エネルギー安全保障を支持することを目的に、「ウクライナのための緑の基金」を設立し、運営する義務を負ったと書かれている。その際、「ドイツと米国は、民間分野の主体など第三者からのものを含め、ウクライナのための緑の基金への少なくとも１０億米ドル投資促進、サポートの努力を行なっていく」とあり、またドイツが１億７５００万ドルをまず同基金に入れると伝えられた。同基金は、再生可能エネルギー、水素開発促進、エネルギー効率向上、脱石炭の加速、石炭廃棄物の減少を促進していくとのこと。ドイツはまた、本件に関して特使を任命し、また同イニシアティブ支援のために７０００万ドルを拠出すると書かれている。
さらにドイツは、ウクライナのエネルギー安全保障強化を目的とした、ウクライナ弾力パッケージを立ち上げる準備があると説明されており、同パッケージは、ロシアによる潜在的なエネルギー供給縮小からウクライナを守るための、ウクライナへのガスの逆流供給の確保を想定している他、ウクライナの欧州電力網への統合の技術的支援を含む者だと書かれている。さらにドイツは、ウクライナをサイバー能力強化の努力へと加え、エネルギー分野改革や、ウクライナの火力発電所の近代化のための案の模索促進も行なっていくと約束した。
なお、今回の合意につき、ウクライナとポーランドは、独露間ガスパイプライン「ノルド・ストリーム２」はウクライナや中欧全体に対する政治、軍事、エネルギー面の脅威を生み出すものであり、２１日に発表された米国とドイツによるロシアのガスパイプライン「ノルド・ストリーム２」に関する合意はそれを止める試みを拒否するものだとして批判している。
