ベニス委員会、ウクライナの「オリガルヒ法」の問題を指摘
ベニス委員会が結論文書を公開した。
委員会の結論では、大きな影響力が一人の人に集中することは危険であり、それを克服するためには、効果的で競争的な政治、汚職や資金浄化との闘い、報道の多元性確保などが必要だと指摘されている。
同時に、委員会は、いわゆる「オリガルヒ法」は、そのような他分野の体系的アプローチではなく、対個人アプローチとなっているとし、「その『対個人アプローチ』は、資産、メディア所有などの一定の基準で個人を『オリガルヒ』として定めることを目的とし、彼らに複数の制限をかけるものである(例えば、政党や選挙運動への資金供与禁止)。このアプローチは、当然ながら、懲罰的性格を有している」との見方を示した。
その他結論では、オリガルヒの影響力との闘いにおいては、普遍的な手段はないものだとし、例外的状況下で暫定的かつ最終的手段としてなら、そのような対個人的性格を持つ方策も正当化され得ると書かれている。他方で、そのような手段は、体系的アプローチの代替となるものではなく、補助的なものにしかなり得ないとも指摘されている。
また委員会は、「現時点で、オリガルヒ法は、オリガルヒ問題への民主的な対応とはみなせない。同法は、潜在的に政治目的に利用されかねないものであり、政治的多元性や法の支配の原則とは調和しがたい。(中略)ベニス委員会は、同法は現在存在する版では履行されるべきではなく、『体系的アプローチ』を運用すべきであるとの結論を下す」と強調した。
その上で委員会は、オリガルヒ法の履行時期を法的に遅らせ、同法の欠点を定め、効果的かつ具体的政策、国家調達の透明性の向上、汚職との闘い、報道機関の多元性の強化などを定める代替法案を策定するよう勧告している。
これに先立ち、2021年9月23日、ウクライナ最高会議は、通称「オリガルヒ定義・対策法」を採択していた。同法案は、社会において経済・政治面の著しい影響を持つ人物(オリガルヒ)を定義し、オリガルヒと定義された人物を登録リストに加える手続きと登録により発生する影響を定め、またオリガルヒと定められた人物と公的人物の接触の宣言を義務付けることを想定している。
同法案によれば、オリガルヒとみなされるのは、以下の複数の基準の内、同時に3つを満たす人物。(1)政治に参加している。(2)マスメディアに著しい影響を持っている。(3)経済競争保護法によって独占・寡占状態となっている企業の最終受益者である。(4)資産総額が指定額(100万生活最低限単位)を超えている。