モルドバ外務省、被占領地の「大会」は「ロシアのハイブリッド戦争の一要素」だと指摘
モルドバのニュースサイト「ニュースメーカー」がポプショイ外相の発言を報じた。
ポプショイ氏は、ティラスポリで28日に開催された「大会」につき「ロシアのハイブリッド戦争のもう1つの要素であり、モルドバ情勢の不安定化の試みだ」と形容した上で、「そのような声明は、これまでも現在も、今後もおそらく、繰り返されていく」と指摘した。
また同氏は、モルドバはロシアの標的であり続けているとし、とりわけ、モルドバで大統領選挙と欧州統合国民投票が行われることに関連してロシアに狙われているとの見方を示した。
そして同氏は、「すでに一定期間、私たちは、情勢不安定化の試みと国益やモルドバ国民の利益に反するナラティブの推進の試みが観察されている。しかし、モルドバは過去2年間、自らの状態を強化し、私たちの国家機関はハイブリッド攻撃に対して一層強靭になっている。国民は、自らが操作されないように学んでいる」と強調した。
これに先立ち、28日、被占領下モルドバ領トランスニストリアの非承認「国家」の「議員」は、ロシアの上下院に対して、「モルドバからの圧力強化」があると主張した上で、ロシアから同非承認「国家」の保護のための方策実現を要請する決定を採択していた。
ニュースメーカーは、2024年初頭にモルドバ政府がトランスニストリアに位置する企業への関税優遇措置を取り消し、これが非承認「国家」の激しい反応を呼び起こしたと説明している。非承認「国家政権」は、ティラスポリでモルドバに反対する抗議を組織したという。
28日はティラスポリで「全議員大会」が開催。同大会には、非承認「国家」の「首長」であるヴァディム・クラスノシルスキーも出席した。同大会は7回目。なお、前回の大会は2006年に開催されており、その際、トランスニストリアのロシアへの編入を問ういわゆる「住民投票」と呼ばれるものの実施を採決していた。同年、いわゆる「住民投票」と呼ばれるものが実施され、投票者の90%以上がロシアへの編入を支持する「結果」が出たと発表されていた。
国際社会もモルドバも、同「住民投票」と呼ばれるものの結果を認めていない。
今年2月、ロシアのラヴロフ外相は、モルドバの被占領下トランスニストリア地域で暮らす、ロシアが「ロシア系」だと主張する住民の運命を「懸念する」と発言していた。これに対して、シェウチェンコ駐モルドバ・ウクライナ大使は、それはモルドバ情勢を不安定化させる試みだとコメントした。
モルドバ領トランスニストリア地域には、90年代から第14ロシア軍が駐留している。1999年、欧州安全保障協力機構(OSCE)イスタンブル首脳会談にて、ロシア連邦は2002年末までに同地から軍と弾薬を撤退することが義務付けられたが、ロシアは現在までこれを履行していない。
2017年、モルドバ憲法裁判所は、ロシア軍のトランスニストリア地域への駐留は国家の中立に反するものだと認定している。
2022年3月15日、欧州評議会議員総会は、このロシア軍の違法駐留の続くモルドバ領トランスニストリア地域を「被占領下」と定める決議を採択している。
サンドゥ・モルドバ大統領は、同国がロシアに対して、モルドバ領トランスニストリア地域からのロシア軍、兵器、弾薬の撤退・撤収を要求していることを繰り返し喚起している。またサンドゥ氏は、2023年8月、モルドバは国内のトランスニストリア紛争につき、平和的な手段でのみの解決を望んでいるとしつつ、ロシアの対ウクライナ戦争にてウクライナが勝利した際には、トランスニストリア紛争解決に向けた地政学的な機会が生じるかもしれないと発言していた。
また、ウクライナのゼレンシキー大統領は2023年6月1日、モルドバが抱えるトランスニストリア占領地問題につき、モルドバ首脳陣から要請があれば、ウクライナは対応し、同国を支援し得ると発言している。