プーチンの「ロシア人とウクライナ人は一つの民」論文はウクライナ併合シナリオ=米歴史家
スナイダー教授がキーウで開催されたヤルタ欧州戦略会議(YES)の際に発言した。ウクルインフォルムの記者が伝えた。
スナイダー氏は、「実際には、その文は、アンシュルス(併合)シナリオである。つまり、彼の論拠は、『お前たち(編集注:ウクライナ)は自分を国家だと思っているのか? お前たちは実際のところは国家ではない。私が、私たちの間にどのような歴史的繋がりがあったかについて、話してやろう』というものだ。それは1938年のレトリック、ヒトラーがオーストリアを併合した際のレトリックである」と指摘した。
同氏はまた、プーチン露大統領が自身の論文の中で、自身のウクライナに対する侵略の立場を正当化するために、第二次世界大戦の歴史を改変していると発言した。同氏は、プーチン露大統領による第二次世界大戦の話の中には「大きな緊張がある」とし、プーチン氏は一方で、ソ連を第二次世界大戦の犠牲者だと述べるのに対し、他方で、第二次世界大戦開戦のきっかけとなったモロトフ=リッベントロップ協定(独ソ不可侵条約)の締結を当時状況下における合理的な行動だった擁護しているとし、プーチン氏がより侵略者側の立場に近づいていると指摘した。
またスナイダー氏は、プーチン氏の論文は非常に反欧州的であるとし、欧州の人々はそれに対する対応を考えるべきだと主張した。
これに先立ち、7月12日、プーチン露大統領は、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」と題する論文を公開していた。その論文は、「ロシア人とウクライナ人は一つの民である」とする従来の同氏の主張から始まっている。またプーチン氏は、「ロシアとウクライナの間にここ数年で生じた壁」を「悲劇のような大きな苦しみ」だと形容し、その責任は、ウクライナ人自身が自ら犯した過ちと外部勢力による「目的を持った活動」にあると主張している。
ゼレンシキー大統領は、ウクライナ人とロシア人は、「確実に一つの民ではない。それぞれに自らの道がある」と発言している。
ウクライナの世論調査では、ウラジーミル・プーチン露大統領による「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」に関する主張に「同意しない」と回答した回答者は約70%に上っている。