マリウポリ防衛のウクライナ兵、ユーロヴィジョンでウクライナ代表が優勝した曲を歌う姿を公開

動画

ウクライナ東部のロシアによる大半が制圧されたマリウポリにて製鉄工場「アゾフスタリ」にて防衛を続けるオレストさんは、14日の欧州音楽祭「ユーロヴィジョン」で優勝したウクライナ代表「カールシュ・オーケストラ」の曲を歌う動画を公開した。

退役兵問題省傘下のウクライナ退役兵基金がツイッター・アカウントに動画を公開した

動画では、オレストさんがアゾフスタリにてカールシュ・オーケストラの曲「ステファニヤ」を歌っている。動画では、遠くで爆発音も聞こえている。

また退役兵基金は、オレストさんは「アゾフスタリの目」だとし、「彼が映したマリウポリで包囲されている製鉄コンビナートの動画が、世界やウクライナのメディアで流れているのだ。彼が数日前に、アゾフスタリの負傷した防衛者の写真を撮ったのだ。その写真もまた世界を飛び回り、負傷兵の避難が緊急に必要であることを思い出させたのだ!」と伝えた。

さらに、基金は、オレストさんの言葉を複数伝えている。

「今日は、古い夢を思い出した。9年前、まだポーランドで勉強していた時のことだ。私は、大きなリュックサックを背負って、そこにたくさんの本を入れて、スタジアムに走っていた。軍事ジャーナリストになることを夢見ていた。その時は、いつかそれが現実になるということを信じることができていなかった。」

また基金は、オレストさんが5月2日にマリウポリの花の咲いた木の下で撮った写真を公開し、「この写真は、皆に私のことを覚えておいてもらうための『最期の写真』としてぴったりかもしれない。私のことを最高に表している写真、私は最も酷い時でも何か素敵なものを見つけられる。でも、私は、この写真が始まりに過ぎないと信じている。私たちの解放と勝利の始まり」と書き込んだと伝えた。

基金は、「オレストと彼の仕事が、改めてこの戦争の情報面の重要さを証明した。彼は、ウクライナの防衛者の偉業、ロシアのマリウポリにおける軍事犯罪を記録している。それは、今日のため、明日のための仕事である」と強調した。

さらに基金は、オレストさんの家族が彼が帰ってくるのを待っているとし、「オレストは、母の日に、妹が母親のためにピザを注文したがっていたと話していた。しかし、母親はピザを食べなかった。その時母親は、『ピザは、余分な食べ物。息子がマリウポリにいる間、彼と仲間たちは食べ物が足りてないのだから』と述べたという」と伝えた。

そして基金は、「もうすぐマリウポリの全ての防衛者が親族とテーブルを囲めることを信じている。たくさんの抱擁と喜びの涙がやってくる。そして、勝利が訪れる」と書き込んだ。

これに先立ち、ウクライナの国家警護隊特命分遣隊アゾフ連隊は10日、マリウポリの防衛戦にて負傷したウクライナ軍人たちの写真を公開し、彼らの避難確保を要求していた

また、14日にイタリア・トリノで『ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2022』決勝が開催され、ウクライナ代表の民族ラップ・グループ「カールシュ・オーケストラ」が優勝した。カールシュ・オーケストラのボーカルのオレフ・プシュクさんは演奏が終わると、ステージ上から「ウクライナを助けて! マリウポリを助けて! アゾフスタリを助けて! 今すぐに!」と呼びかけていた。

なお、ウクライナ政府は、現在アゾフスタリに残る、負傷兵をはじめとするウクライナ兵の避難についてロシア側と協議を行っている。しかし、マリャール宇国防次官は15日、プーチン露大統領がアゾフスタリの防衛者の解放に同意していないと発言していた。