南部ヘルソン市の教師たち、ロシア占領政権との協力を拒否
ロシアにより占領が続くウクライナ南部ヘルソン市では、占領政権代表者と対的協力者が同市の教師たちを「会合」へと呼び出し、今後の協力を提案したが、大半の教師がこれを拒否した。
ウクルインフォルムの記者がヘルソン市の関係者から話を聞いた。
関係者は、「テチャーナ・クジミチュ氏が各学校に『招待状』をばらまいた。彼女は、武装したロシア軍人とともに歩き回っていた。学校に校長がいなければ、彼らは招待状を警備員に渡して、チェックを入れた。そのいわゆる『会合』へは今日、学校関係者が20人ちょっと集まった。私たちの市には61の学校がある。(集まったのは)全員ではない。校長が来たところもある。ヴォロディーミル・サリド(編集注:ロシアが「任命」した、いわゆる『ヘルソン州軍民行政府長官』)と、その隣には、サリドの『副長官』を名乗るチェレウコ(編集注:対敵協力者、元ヘルソン副市長セルヒー・チェレウコ)もいた」と伝えた。
また、対敵協力者として知られるキリロ・ストレモウソウの姿もあったという。そして、「会合」に出席した教師たちは、サリドが防弾チョッキを着ていたことに気付いたとし、教育関係者との会合でさえ彼は命の危険を感じているのだと思ったという。
関係者は、この対敵協力者たちは出席した学校の代表者たちに対して協力を提案した上で、「庇護」を約束すると発言しと指摘した。「招待状」をばら撒いたクジミチュ氏は、ヘルソンの学校はロシアのカリキュラムに従って運営され、ロシア語教育へ移行しなければならないとし、またヘルソン教育の新しいトップを探しているとも発言したという。関係者は、サリド氏が、今回会合への教師たちが出席したことで、この教師たちは占領政権を支持していると思ったようだと指摘した。
しかしながら、教師たちは、この対敵協力者の「提案」を聞き終わると、今回は何が行われているかを知るために来ただけであり、占領政権に同意しているわけではないと伝え、今回の提案に同意しない場合には帰っても良いかと尋ね、「帰って良い」と言われると、ほぼ全員その場を去ったという。
なお、2月24日のロシア軍のウクライナに対する全面的侵略により、現在ウクライナ南部では、ヘルソン州とザポリッジャ州の一部がロシアにより占領されている。占領開始当初は、両州各地で住民による反占領集会が盛んだったが、ロシア軍人よる地方自治体関係者、記者、教師、活動家、聖職者などへの拉致、略奪、拷問などの被害が相次ぎ、次第に反占領集会の頻度は下がっていた。
4月24日、英国防省は防衛インテリジェンスの報告として、ロシア軍にとって、クリミアとの陸上回廊の確立とウクライナ南部の支配という目標達成における重要な町となっているとの見方を示した。
4月27日、ヘルソン市では、住民たちが偽「住民投票」とロシア占領に反対する親ウクライナ集会を開催していた。
5月6日、タシェヴァ・クリミア自治共和国ウクライナ大統領常駐代表は、ロシア占領者は、ウクライナ南部の新たに占領した領土をクリミアに併合させてあらたな行政区を作る可能性を含め、占領地統治に関する複数の案を検討していると指摘していた。
ヘルソン州議会のソボレウシキー副議長は5月11日、占領者や共謀者によるヘルソン州地位に関するいかなる行動も法的に無意味であるとコメントした。