「ウクライナを代償にした平和」の呼びかけがまたも聞こえる=ウクライナ政権幹部
ウクライナのイェルマーク大統領府長官は、西側諸国の新旧政治家や経済界の影響力のある人物が、ウクライナに対して「平和や人類のために」ロシアとの協議を呼びかけているが、その呼びかけは実はウクライナのためでも正義のためでもないものだと主張した。
イェルマーク大統領府長官が、テレグラム・チャンネルにて、自身のワシントン・ポスト紙への寄稿を紹介した。
イェルマーク氏は、「『ウクライナを代償にした平和』ナラティブがまたもや様々な方向から聞こえてきている。それは初めてのことではない。2月の戦争開始以降、そのナラティブは変わってきた。まず『ロシアを落ち着かせるために、ウクライナは消滅すべきだ』から『欧州が暖かくいられるように、ウクライナは降伏すべきだ』に変わった。今度はそのナラティブ『新しい世界大戦を防ぐために、ウクライナは自国領の解放を止めるべきだ』になった」と発言した。
同氏はまた、それはウクライナは受け入れられないとし、「ウクライナは平和を希求している。しかし、私たちの(平和の)条件は知られている。私たちは何度もそれについて話してきた。ゼレンシキー大統領は、(平和の条件につき)シンプルにこう述べた。『侵略の罪を裁くこと』『生存権、自由…そして安全を守ること』『ウクライナの安全と領土一体性の回復』『安全の保証』、そして国際社会によるその計画を実現する決断力だ」と伝えた。
さらに同氏は、2014年、ロシアがクリミアを制圧した時から、ウクライナは平和的な和解への呼びかけを聞いていると述べ、「私たちは、外交への呼びかけを聞いてきた。あたかも、私たちがこの戦争を始めたかのようだ。流血は止める時だ、と私たちに言う。あたかも、私たちが戦いを望んでいるかのように。人類の利益を最優先すべきだ、と私たちにアドバイスするのだ。あたかも、私たちが核の黙示録で世界を脅迫しているかのように」と指摘した。
同氏は、ロシアがウクライナ領において偽「住民投票」を行った後に、ウクライナと協議を「再開する」準備があるなどと述べ、自らが平和の努力をしているかのように自慢していたことを喚起し、その後ほぼ全てのロシアの高官も突然「ウクライナとの協議の準備」について話し始めたことを指摘した。
そして、同氏は「(編集注:ロシア高官が)話していないことは、『奪われた領土の返還』『自らの意思に反してウクライナから追放された人々の解放』『戦争により被った損失分の賠償金支払い』『戦争犯罪者の引き渡し合意』である。ロシアは、戦争の勝者になりたい、という理由から、それらの問題については話していないのだ」と指摘した。
加えて同氏は、ロシア軍が後退していること、ロシアの産業はリソース不足となっており、経済が崩壊しつつあることを喚起し、ロシアにとっては戦闘行為の緊急停止だけが体裁を保てる唯一の手段となっていると指摘した。その上で同氏は、ロシア政権にはその目的のために、核兵器による脅迫に訴える用意ができている中で、それと同時に、西側にいる「便利な愚か者(useful idiots)」たちがますます声高に「平和」を呼びかけていると説明した。
そして同氏は、「(西側の)新旧政治家や影響力あるビジネスマンが、クレムリンとの協議を呼びかけている。平和のため、世界のため、人類のためだという。しかし、それはウクライナのためではない。正義のためでもない」と強調した。