ロシアがウクライナから追放した児童の数は26万人〜70万人=専門家
ウクライナの市民団体「人権地域センター」の司法専門家ラシェウシカ氏は、ロシアがウクライナ領から児童を追放したのは少なくとも57地域であり、その数は複数評価により26万人から70万人と推計されていると伝えた。
16日、ラシェウシカ氏がウクルインフォルムで実施された報告書「活発な戦闘発生地域あるいは一時的被占領下ウクライナ領からロシア連邦領とベラルーシ領へのウクライナ国民の追放」発表会の際に発言した。
ラシェウシカ氏は、「ロシアに追放された子供たちは、『子供』という名前でくくられた何らかの1つの集団なわけではない。その数はまちまちで、把握するのは非常に困難だ。なぜなら、ロシアはウクライナにも国際機関にも、そのプロセスへのアクセスを与えていないからだ。そのため、私たちには、児童数の確実な数はわからない。複数のデータによれば、その(追放された)未成年者の数は、26万人から、約70万人とも言われる。なお、それら児童の大半は、合法的保護者とともに移動していることは指摘おくべきだ。子供たちは、彼ら(ロシア)が描こうとしているような、付き添いのない状態だったわけではない。違う。大半は、親と一緒だ。しかし、それはロシアによる追放とジェノサイドの犯罪を過小評価できるものではない」と発言した。
また同氏は、ロシア側が占領地住民に対して行っている「濾過」手続きにより、親族が拘束されたり、殺されたりして、いくらかの子供たちは親や保護者のいないままロシア領に連れて行かれた可能性はあると指摘した。
さらに、同氏は、ロシアがウクライナから強制的に連れ去った子供たちの中には、孤児もいるとしつつ、ウクライナの孤児の90%は、実親や親戚のいる「社会的孤児」だと指摘した。同氏は、「ロシアがそれら子供たちを、『孤児』だと言いながらロシアの家族に引き渡している場合、私たちは、その子供たちには(ウクライナに)近しい親族がいること、何よりもまず引き渡し先となるべき親族がいることを理解しておかねばならない。そのようなロシア領に連れて行かれた孤児は、1500人から2500人だが、彼らは戦災孤児ではない」と強調した。
さらに同氏は、追放された児童の中には、障害を持つ子もいるが、彼らにもまた親族がいると指摘した。
同氏は、ロシアは少なくともウクライナの57の地域から子供たちを追放しているとし、彼らをロシア領のサハリン、アストラハン、ムルマンスク、ダゲスタンといった遠く離れた地域へと送っていると伝えた。
その際同氏は、「私は、あえてこれらの地域を口にした。なぜなら、それら地域は、地理的にかなり離れている、あるいは、文化的に離れているからだ。いずれにしても、子供にとって最善の基準からはかけ離れたものであり、存在する基準とも合致しない」と発言した。
同氏はまた、この状況には、ユニセフ、ハーグ国際司法会議、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)といった国際機関がすでに注意を向けており、それら機関は、ウクライナの子供たちの追放もロシアの家族への強制的引き渡しも、国際条約にも国際人道法にも子供たちの最善の利益の原則にも合致しない行為だと指摘していると伝えた。
加えて同氏は、このような子供たちをウクライナへ帰還させるためには、個別にメカニズムを策定せねばならないが、今のところそのようなものはないと指摘した。これまでに、すでに125件の子供の帰還が行われているが、それは親が積極的に関与したものを含む、何らかの合意の結果として実現したものだという。
ラシェウシカ氏は、それぞれの事例において、ロシアがどのように児童をロシア領に連れ去ったかを明らかにしなければならないと指摘した。
その他同氏は、ロシアが危険な地域からの「避難」だとして自らの行為を正当化していることについては、それは避難とは全くかけ離れたものだと指摘した。同氏は、「そのような避難の基本原則の1つが、子供が国籍を持っている国の同意が必要なことである。ロシアは、自分でもそれらの子供がウクライナ国民であると言いながら、ウクライナの同意は得ていないのである」と説明した。さらに同氏は、本来であれば、国際赤十字委員会に対して、それぞれの子供の各事例において詳細な情報が提出されなければならないが、ロシアは一度もそのようなことを行っていないと伝えた。
また同氏は、全面的侵攻が始まってから、ロシアが新たに占領した地域から、2014年に占領したクリミアへと、少なくとも6000人のウクライナ人児童が連れて行かれたと伝えた。