裁判所がモトール・シーチ社の全資産凍結=保安庁
キーウ(キエフ)市シェウチェンキウシキー地区裁判所は、SBUの提出資料を受けて、ウクライナの航空機エンジン製造企業「モトール・シーチ」社の資産100%を凍結した。
20日、SBUがフェイスブック・アカウントにて発表した。
発表には、「裁判審理の結果、管理を行う国営企業を定めることを義務付けた上で、国家汚職・犯罪獲得資産摘発・捜査・管理庁(ARMA)へと資産を譲渡した」と書かれている。
SBUは、現在同庁の捜査総局がモトール・シーチ社に関して2件の裁判前捜査を行なっていることを喚起した。1つ目は、ロシア連邦の利益となる破壊・反体制工作に関する犯罪の兆候の捜査、2つ目は、同社の民営化とその後の違法は株式集中の際の違法行為が捜査対象となっているとのこと。
発表にて、イヴァン・バカーノウSBU長官は、「一社の運命のみに関係する話ではなく、どれほど国家が国益を防衛できるかについての話である。なぜなら、ウクライナの『モトール・シーチ』社を守ることは、国家安全保障の問題だからだ」と発言した。
同時にSBUは、モトール・シーチ社は、引き続き法にしたがって活動を続け、雇用も経営も維持されると説明した。
これに先立ち、3月11日、ウクライナNSDCは、ウクライナの航空機用エンジン製造企業「モトール・シーチ」社問題を審議し、近々同社を「国に戻す」決定を採択している。
また、1月28日、ウクライナは、航空機用エンジン製造企業「モトール・シーチ」社への投資に関わる中国国籍の実業家王靖(Wang Jing)氏と、中国に位置する3企業、英領ヴァージン諸島に位置する1企業に制裁を発動している。
2019年11月末、アイヴァラス・アブロマヴィチュス国営防衛企業(複合体)ウクルオボロンプロム社(当時)総裁は、中国スカイライゾン社がすでにモトール・シーチ社の株式を50%以上獲得していると発言。また、2019年12月13日、ヴヤチェスラウ・ボフスラウ・モトール・シーチ社名誉総裁は、記者団に対して、同社の株式を中国に売却したことを認めていた。
しかし、モトール・シーチ社の売却に関しては、米国政権が反対を表明。2019年8月、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(当時)は、キーウ(キエフ)訪問時、「私たちは、一般的に、中国側が、とりわけ米国で行っている、不正義かつ不公正な慣習についての警告と懸念を(ウクライナ政権側に)伝えた」と述べている。ボルトン氏は、その際、懸念の理由として、軍事技術の窃取を指摘している。
2020年9月4日、中国のモトール・シーチの株主たちは、ウクライナ司法省に対して、クレームを提出している。同文書では、35億ドル規模の損失について、ウクライナを国際調停裁判所にて提訴する意向が示されていた。
2021年1月15日、米商務省は、中国のスカイライゾン社に対して制裁を発動。ウィルバー・ロス商務長官は、その際、スカイライゾン社は中国側が主張するような民間企業ではなく、国営企業であり、中国側の「外国の軍事技術獲得・合法化の試みは、米国の国家安全保障と外政利益に重大な脅威を生み出している」と指摘していた。
1月31日、ザポリッジャ市にて予定されていた、航空用エンジン製造企業モトール・シーチ社の中国投資家やウクライナの実業家による「臨時株主総会」は、ウクライナの保安庁(SBU)捜査官が捜査を実施したことにより開催が阻止されている。