【マレーシア航空機撃墜裁判】蘭検察、被告人4名の名を読み上げ
20日、オランダのスキポール裁判コンプレクスにて開催された、2014年7月のウクライナ東部にて撃墜されたマレーシア航空MH17便撃墜事件裁判の審理にて、オランダの検察官が4名の被告人の名前を読み上げた。
ウクルインフォルムのハーグ特派員が伝えた。
検察官は、「ギルキン、ドゥビンスキー、プラートフ、ハルチェンコは、(地対空ミサイルシステム)『ブーク』への責任を直接負う者たちだ。彼らの行為が同機の悲劇と298名の死を引き起こした。彼らは、自分でボタンを押したわけではないが、しかし彼らは、ブークを求め、受け取り、自らの軍事目的のために使用し、その結果、MH17を撃ち落とした。被告人は、ウクライナの軍用機を撃ち落とすことを目的としていたが、そのことが罪と証拠の本質を変えることはない。オランダ国内法は、いかなる航空機の撃墜も禁じている。すなわち、4名の被告人は殺人の罪がある。彼らは、自らの軍事目的を追求する上で、ブークを武器として使用した。彼らの対象が軍用機だったのか民間機だったのかとは無関係に、彼らには罪がある」と発言した。
さらに、検察官は、捜査は当初から最高レベルで実施されてきたとし、証言者発言、衛星写真、写真・動画は丁寧に検証されたと述べ、さらには通信傍受された電話のやりとりの声の人物の多くを確立することができたとし、何人かは、傍受された声が自らのものであることを認めたと伝えた。
検察官は、「私たちは、電話の情報をその他の情報源の情報を照らし合わせたり、電波塔の位置を確認したりした。また、私たちは、例えば、画像に、何らかの操作が行われていないか、確かに本物かを確認するために、撮影が行われた機器、記録用カードなどを押収した」と発言した。
また検察官は、ロシア連邦が提供した衛星写真が偽物であったと強調した。さらには、ロシア側がクルスクに位置するロシア軍第53対空ミサイル旅団の配備されていたはずの「3X2」番のブークの事件当日2014年7月17日の居場所について説明しなかったことを伝えた。
その他検察官は、国連安全保障理事会にて、ロシア連邦が国際裁判の設置に関する決定に対して拒否権を発動したことを喚起し、そのために、事件にて最も多くの犠牲者の出たオランダにて裁判を行うことが決定されたと説明した。
検察官は、「オランダは、ウクライナの紛争には関与していないが、しかし管轄権は有している。なぜなら、世界のどの地点のオランダ国民に対する犯罪も罰されるからだ」と発言した。
加えて検察官は、MH17遺族に関する大量の偽情報が拡散されたことを喚起した上で、だからこそ本件にて最終的に真実が伝えられることが非常に重要なのだと強調した。「裁判所の判決が彼ら(遺族)に平和と安らぎをもたらさなければならないし、今後そのような悲劇を防ぐようでならねばならない。(中略)私たちは、被告人の声を聞き、正義ある裁判を保障する準備がある」と伝えた。
なお、本日の裁判は、オランダ時間の10時に始まっていた。審理は、今後、12月21、22日と続く予定。
なお、マレーシア航空機撃墜事件とは、2014年7月17日、アムステルダムからクアラルンプールへ向かっていたマレーシア航空機MH17がウクライナ東部ドンバス地方上空で武装集団により撃墜され、乗客・乗員合計298名全員が死亡した事件をいう。
2016年9月、国際共同捜査チーム(JIT)は、同事件の技術捜査の結果として、同航空機が、親露武装集団支配地域から地対空ミサイルシステム「ブーク」により発射された弾頭「9M38」により撃墜されたことを判明させている。
同時に、民間調査グループ「ベリングキャット」は、MH17を撃墜した「ブーク」がロシア軍第53対空旅団発のものであることを判明させていた。ベリングキャットは、ソーシャル・メディアとオープンソース情報の独自の分析を通じて、MH17撃墜に関与した20名のロシア軍人を特定させた報告書を発表した。これら軍人の名前が写真付きで示されているこの報告書は、オランダの検察に渡されている。
2018年5月24日には、JITは、MH17を撃墜したロシアのミサイルの破片を公開しつつ、ミサイルがロシアのクルスクを拠点とするロシア軍第53対空ミサイル旅団に属するものであることが判明したと発表した。
なお、2019年6月、マレーシア航空機MH17撃墜事件の捜査を行う国際共同捜査チーム(JIT)は、同撃墜に関与した容疑者4名(イーゴリ・ギルキン(ロシア国籍、ロシア連邦軍元将校、ロシア連邦保安庁(FSB)元大佐)、セルゲイ・ドゥビンスキー(ロシア国籍、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)大佐)、オレグ・プラートフ(ロシア国籍、予備大佐)、レオニード・ハルチェンコ(ウクライナ国籍))を公表している。
MH17の公判は、2020年3月に始まっている。
同捜査は現在も続いている。2021年9月2日、JITは、撃墜に用いられた地対空ミサイルシステム「ブーク」の搬送元であるロシアの都市クルスクにおける、証拠となる写真、動画、公的文書などの情報提供を呼びかけるメッセージを発表した。