【マレーシア機撃墜裁判】蘭検察、元露大佐ら被告人に終身刑を求刑
22日、オランダのスキポール裁判コンプレクスにて、2014年7月のウクライナ東部にて撃墜されたマレーシア航空MH17便撃墜事件裁判の審理が行われたところ、オランダの検察官は、元ロシア大佐ら4名の被告人に対して終身刑を求刑した。
ウクルインフォルムの特派員が伝えた。同日の審理では、検察側は、容疑内容の紹介を続けた上で、求刑を行った。
オランダのテイス・ベルガー検察官は、「私たちは、ギルキン、ドゥビンスキー、プラートフ、ハルチェンコ(編集注:被告人4名)に、MH17便破壊と298名殺害の罪があると考えている。彼らは、長期の刑を受けるに値する」と発言した。
ベルガー氏はまた、地対空ミサイルシステム「ブーク」がMH17便民間機を破壊したことを喚起した。これを受け、遺体は高高度の上空から落下、その破片の事件現場での捜索には数か月が必要となり、遺体の遺族への返還に時間がかかったことを指摘した。
同氏は、「戦争と、彼ら(被告人)が、おそらく、軍用機を撃墜したかったということは、酌量減軽にならない。彼らは、ブークの輸送と配置を組織した。彼らは、民間機への脅威を作り出したのだ」と強調した。
その上で同氏は、被告人らは破壊行為、計画した暴力行為を犯したのだとし、「その行為に最も合致するのは、終身刑を定める航空機破壊条項であり、同条項は民間機と軍用機の別を設けていない」と説明した。
なお、マレーシア航空機撃墜事件とは、2014年7月17日、アムステルダムからクアラルンプールへ向かっていたマレーシア航空機MH17がウクライナ東部ドンバス地方上空で武装集団により撃墜され、乗客・乗員合計298名全員が死亡した事件をいう。
2016年9月、国際共同捜査チーム(JIT)は、同事件の技術捜査の結果として、同航空機が、親露武装集団支配地域から地対空ミサイルシステム「ブーク」により発射された弾頭「9M38」により撃墜されたことを判明させている。
同時に、民間調査グループ「ベリングキャット」は、MH17を撃墜した「ブーク」がロシア軍第53対空旅団発のものであることを判明させていた。ベリングキャットは、ソーシャル・メディアとオープンソース情報の独自の分析を通じて、MH17撃墜に関与した20名のロシア軍人を特定させた報告書を発表した。これら軍人の名前が写真付きで示されているこの報告書は、オランダの検察に渡されている。
2018年5月24日には、JITは、MH17を撃墜したロシアのミサイルの破片を公開しつつ、ミサイルがロシアのクルスクを拠点とするロシア軍第53対空ミサイル旅団に属するものであることが判明したと発表した。
なお、2019年6月、マレーシア航空機MH17撃墜事件の捜査を行う国際共同捜査チーム(JIT)は、同撃墜に関与した容疑者4名(イーゴリ・ギルキン(ロシア国籍、ロシア連邦軍元将校、ロシア連邦保安庁(FSB)元大佐)、セルゲイ・ドゥビンスキー(ロシア国籍、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)大佐)、オレグ・プラートフ(ロシア国籍、予備大佐)、レオニード・ハルチェンコ(ウクライナ国籍))を公表している。
MH17の公判は、2020年3月に始まっている。
同捜査は現在も続いている。2021年9月2日、JITは、撃墜に用いられた地対空ミサイルシステム「ブーク」の搬送元であるロシアの都市クルスクにおける、証拠となる写真、動画、公的文書などの情報提供を呼びかけるメッセージを発表した。
なお、今回の公判は同裁判の最終段階にあたるもので、20日から開かれていたもの。20日から、検察側は、同事件捜査の経緯について説明を行っていた。