NATO関係者、ウクライナの領土放棄でNATO加盟に言及 ウクライナは反発

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長の側近であるイェンセン事務総長官房長は、ウクライナが領土を放棄することで同機構に加盟する可能性に言及したところ、複数のウクライナ政権関係者が反論した。

ウクライナのニコレンコ外務報道官は15日、フェイスブック・アカウントにて、そのようなナラティブの形成はロシアの有利に働くものであり、全く受け入れられないものだと指摘した

ニコレンコ氏は、「ウクライナが自国領の一部を放棄することの代わりにNATOに加盟するという話は、全く受け入れられない。NATOはウクライナ同様、領土で交渉をしないということを常に基本としてきた」と発言した。

同氏はまた、NATOの関係者がウクライナによる自国領土放棄の可能性に関するナラティブを形成することは、ロシアの有利に働くものだと警告した。そして同氏は、ウクライナの勝利を加速し、同国のNATO完全加盟について協議することが、欧州大西洋安全保障の利益となると指摘した。

その上で同氏は、その目的を達成すべく、ウクライナ外務省は、NATO事務局とのさらなる生産的な協力を行う用意があると伝えた。

ダニーロウ宇国家安全保障国防会議(NSDC)書記は、テレビ番組「統一ニュース」出演時に、今回のイェンセン氏の「領土放棄」の発言を「奇妙」なものだと指摘した

ダニーロウ氏は、「第二次世界大戦終了後、どのような国もこのような試練を経験した国はない。もちろん、アドバイスは可能だ。今日、さらに1人の人物が私たちの領土に関する声明を行った。私からすると、かなり奇妙なものだ。(中略)NATO事務方の1人の声明だが、彼は、私たちがNATO加盟と引き換えに私たちの領土の譲歩を検討すべきという発言したのだ。奇妙な発言である。何のための発言なのか、全く理解できない」とコメントした。

アラハミヤ宇最高会議(国会)与党「人民奉仕者党」会派長は15日、テレグラム・チャンネルにて、ウクライナによる領土放棄は地球上の別の場所で新たな紛争を生み出す危険があるとコメントした

アラハミヤ氏は、ウクライナが何かと引き換えに自国領を潜在的に放棄するという話自体は、さらなる侵略を引き起こすだけであり、それはロシア側の反応からして明らかだと指摘した。

また同氏は、ロシアは今回の案を気に入っているとし、その案は侵略戦争を合法化し、国際法を弱体化し、民主主義を敗北に追いやり、全体主義体制を勝たせるものだからだと書き込んだ。

さらに同氏は、「領土放棄は戦争の終了を意味しない。それは地球上の様々な場所での新たな紛争の発生を保証するものだ」と強調した。

同日、ウクライナ公共放送局は、NATO公式代表者による、ウクライナの主権と領土一体性を支持するとのNATO公式代表者の発言を報じた

同人物は、「私たちはウクライナを必要な限り支持し続けていくし、私たちは公正かつ永続する平和の達成にコミットしている」と発言した。

同時に同人物は、ウクライナはいつどのような条件で平和を達成するかを自分で決めなければならないとも述べ、同時に、戦争が繰り返されることがないことを保証し得る安全保障合意が必要であることは明白だとも強調した。

また同人物は、「NATOの立場は明確で、変わっていない」と発言した。

これに先立ち、15日、イェンセンNATO事務総長官房長が、ウクライナはロシアへの領土割譲と引き換えにNATOに加盟できる可能性につき発言していた。

※更新(17日11:52):イェンセン氏の肩書きを訂正