ルッテNATO事務総長、加盟国に「戦時的思考」への移行を呼びかけ

北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は12日、NATOがもし自分たちの領土で戦争が起きるのを防ぎたいのであれば、加盟国はもう今から防衛力を断固として増強し、世界の平和的な認識を戦時的な思考に変えなければならないと訴えた。

ルッテ事務総長がブリュッセルのシンクタンク「カーネギー・ヨーロッパ」における「戦争を防ぐためには、私たちはより多く支出せねばならない」と題名での基調講演の際に発言した。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。

ルッテ氏は、「私たちの抑止システムは優れているが、それは今だけのことだ。私は、明日のことを不安に思っている。私たちは、4、5年後に私たちの道のりに生じることへの準備ができていない。危険は、私たちの方向に全速力で迫ってきている。私たちは、目を逸らしてはならず、それに立ち向かわねばならない。ウクライナで起きたことは、ここでも起き得るのだ」と発言した。

同氏はまた、NATO加盟国領土内での次の大戦争を防ぐ可能性はまだあると述べ、「私たちはそれができる。それは、私たちがより迅速かつより獰猛になることを要求する。戦時的思考に移行し、私たちの防衛産業と防衛支出を急増させる時が来た」と指摘した。

同時に同氏は、現時点ではNATO加盟国領内で差し迫った軍事的脅威は生じていないと指摘した。そして同氏は、NATOは市民に安全を保証するために変貌しているとし、防衛費は増加し、技術革新は加速していると発言、またNATOはより即応性の高い戦力を保有し、より頻繁に軍事訓練を行い、その規模を拡大し、より多くの部隊と装備を東方に配備していると伝えた。同氏は、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟して同盟国数が増えたことが重要だと補足した。

同時に同氏は、しかし、将来の安全保障上の挑戦に対応するにはそれだけでは不十分だとし、ウクライナにおける戦争がどのような形で終了しようとも、危険を克服する準備がなければ、西側諸国は安全にはならないと強調した。

そして同氏は、欧州の民主主義国は、何十年もの間注意と投資の不足していた防衛産業を強化せねばならないと訴えた。同氏は、欧州が平和であった時、防衛は余分なニーズだと見なされていたとし、その結果、現在欧州の防衛産業は過度に小さく、過度に細分化され、過度に遅くなっていると指摘した。

さらに同氏は、「その間ロシアの軍事工場は戦争のための装備品を24時間体制で生産している。私たちのウクライナの友人たちの勇敢な努力にもかかわらず、ロシアは私たちの予想をはるかに上回る速度で自軍を再建している。彼らは、戦場でも迅速に学んでいる」と主張した。

その他同氏は、中国もまた自らの軍事産業基盤を増強しているとし、中国は米国の5〜6倍の速度で高度な兵器システムや装備品を手に入れているとの情報があると発言した。

その際同氏は、中国は迅速に自国軍を、透明性も制限もないままに、急速に増強していると指摘し、2020年に200発だった核弾頭は、2030年には1000発以上になると予想されていると伝えた。同時に同氏は、中国は宇宙開発計画や、人工知能、漁師技術、宇宙技術の未来の技術の利用においても急速な進歩を遂げていると指摘した。

その上で同氏は、「ロシアと中国は競争をリードしようと必死だ。私たちには、置いていかれるリスクがある。それは非常に危険だ。しかし、それを生じさせてはいけない。もし私たちが産業を増強したら、私たちはライバルを追い抜くことができる」と発言した。

同氏は、すでに現在NATOはあらゆる必要な防衛計画を有していると指摘し、同盟国はNATOをどのように守り、そのために必要な資産や能力(艦船、戦車、戦闘機、弾薬、衛星、新しい無人機技術)を正確に把握していると発言した。

そして同氏は、「ウクライナ人はロシアの無人機の群れと戦っている。それこそが、私たちが準備しておかねばならないことだ」と強調した。

これに先立ち、12月上旬、ルッテ氏は、現在の安全保障状況では、以前定められていた最低防衛支出であるGDP比2%というのは、もはや同盟の抑止・防衛ニーズに合致していないと発言していた。

NATO諸国は現在、目標となる防衛費の増加について協議を行っており、それはGDP比3%、あるいはそれ以上になるかもしれないという。すでにポーランドやバルト諸国という「前線隣接」国家は、自国の防衛費をその将来の見込み水準より多く形上している。