日ウクライナ共同声明公開
3月21日、岸田日本首相はキーウを訪問した際に、ゼレンシキー・ウクライナ大統領とともに共同声明を発出した。なお、2014年のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、両国共同声明が出るのは初めて。前回の両国共同声明は、2011年の菅・ヤヌコーヴィチ両国当時首脳が採択したもの。
日本外務省がウェブサイト上に日本・ウクライナ共同声明日本語仮訳を掲載した。声明の概要以下のとおり。
日宇首脳は、同声明にて、ロシアの対ウクライナ侵略を可能な限り最も強い言葉で非難した。その際両首脳は、同侵略が法の支配に基づく国際秩序の根幹を損ない、国連憲章の基本原則に対する重大な違反であり、欧州・大西洋地域のみならずインド太平洋地域及びそれ以外の地域における安全、平和、安定に対する脅威となっていると指摘した。
両首脳は、力による領土取得、力・威圧による国境変更の一方的試みは容認できないと表明した。その上で、ロシアによるウクライナ領土の違法な併合の試みへの不承認政策を確認した。その際両首脳は、ロシアは「直ちに敵対行為を停止し、ウクライナ全土から全ての軍及び装備を即時かつ無条件に撤退させなければならない」と強調した。
また両首脳は、国際的に認められた国境内(編集注:クリミアを含む)におけるウクライナの主権及び領土一体性を完全に回復することが、世界の平和、安定及び安全にとって不可欠であるとの見解で一致した。
日本は、「公正かつ永続的な平和」の回復に向けたウクライナの努力を称賛し、ゼレンスキー大統領の平和フォーミュラの実施に向けた努力への支持を表明した。
その他、両首脳は、ロシアの民間人・インフラ施設攻撃非難、対露制裁継続、戦争犯罪などの処罰の必要性、ロシアの核兵器威嚇の非難、ロシアのザポリッジャ原発占拠への懸念で一致した。
また両首脳は、「ウクライナからの穀物イニシアティブ」「黒海穀物イニシアティブ」、並びにEU・ウクライナの「連帯レーン」の重要性・履行を強調した。
両首脳は、ロシアによる情報操作や偽情報キャンペーンを非難した。
ゼレンシキー大統領は、G7議長国である日本のリーダーシップに謝意を伝えた。岸田首相は、日本は厳しい対露制裁や対ウクライナ支援におけるG7の結束を維持していくと伝えた。
両首脳は、日本とウクライナが自由、民主主義、法の支配、国際法、人権の尊重といった基本的価値を共有していることを強調し、その上で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の推進に向けたコミットメントを強化することを確認した。
ゼレンシキー大統領は、日本及び日本国民に対して、これまでの総額71億米ドルの財政、人道、その他の支援につき謝意を表明した。岸田首相は、日本のウクライナに対する継続的な支援を表明し、日本がウクライナ及びウクライナの人々と共にあることを改めて確認した。
日本は、ウクライナの戦後の復旧・復興を行っていくことを確認した。両首脳は、その際民間セクターが重要な役割を果たすべきだとの認識を共有した。また、両首脳は、ウクライナの司法改革、法執行、汚職との闘いなどの分野の連携促進にて、G7の役割を強調した。
ウクライナは、同国の文化遺産の保護のために日本が支援を提供する用意があることを歓迎した。
両首脳は、政府開発援助(ODA)を活用した二国間協力の重要性を強調した。
両首脳は、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障の不可分性を認識し、自由、民主主義、法の支配といった基本的な価値や原則を共有する重要なパートナーとして、国連憲章にうたう目的及び原則に従い、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化すべく共に協力する意図を再確認した。その際、ゼレンシキー大統領は、日本の国家安全保障戦略の策定を賞賛した。
両首脳は、法の支配に基づく、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向けて協力することで一致した。また、両首脳は、国際法、特に国連海洋法条約(UNCLOS)を尊重すること、また航行及び上空飛行の自由を維持することの決定的な重要性を再確認した。
さらに両首脳は、東シナ海及び南シナ海情勢への深刻な懸念を表明し、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対した。また、両首脳は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促した。