ブチャ・サミットにおける各国首脳発言まとめ
3月31日、第1回ブチャ・サミットがキーウで開催され、各国首脳がロシアがキーウ州ブチャで行った凄惨な行為を非難し、責任追及の必要性を訴えるメッセージを寄せた。
ブチャ・サミットの様子はウクライナ大統領府がオンラインで公開した。
マクロン仏大統領は、1年前、ウクライナがブチャ、イルピン、ボロジャンカなどの自治体をロシアの占領から解放した際に、世界中が民間人の大規模な処刑、拷問、強姦、子供の連れ去り、住民の追放に衝撃を受けたと発言した。マクロン氏は、ロシアの侵略戦争は、ウクライナ人に対する「体系的な戦争犯罪」を引き起こしたとし、「ロシアの首脳陣は、国際法を軽視しながら、それを許しただけでなく、それを奨励した。ウクライナ人の根絶を目的として暴力を用いるという明白な目的とともに」と強調した。
その上でマクロン氏は、フランスは、「ブチャを忘れていないし、忘れることはない」とし、ウクライナのその他の場所での大規模犯罪も同様に忘れないと述べた。同氏は、フランスがこれら犯罪の捜査を支援していることを喚起した。
さらに同氏は、「ウクライナ領の解放とロシア侵略への勝利が、強靭で公正な平和へ向けての最初の一歩となる。それが私たちの支援の目的だ」と強調した。
ショルツ独首相は、ブチャは全世界にこの戦争で何が起きているのかを示したとし、「その時から、世界は、ロシアがどのような意図を持っているのか知っている。そして、私たちは、ロシアが勝った場合にどのような運命がウクライナを待ち受けているのか知っている。しかし、ロシアは勝利しない。なぜなら、私たちは団結しているのだから。私たちはロシアの侵略に満場一致で反対している」と強調した。
ショルツ氏は、自身の昨年のイルピン訪問を喚起しつつ、人々は「ブチャ」という言葉によって今後長い間、ロシアの対ウクライナ侵略戦争のことを考え続けていくだろうと発言した。
そしてショルツ氏は、罪人の責任は問われることになると述べ、「私たちには共通の目的がある。戦争犯罪の不処罰はあってはならない」と強調した。同氏は、「ドイツはハーグの国際刑事裁判所(ICC)の捜査実施を支持している。そして、最近ICCによる行為(編集注:プーチン露大統領らの逮捕状発布)は、いかなるものも法の上には立てないことをはっきりと示すものだ」と発言した。
トルドー加首相は、「私たちはそこで起きたことを決して忘れてはならない。私たちは、ウクライナの人々のために法正義のために闘っていく。それが私たちの責任であり、カナダが行っていることだ」と発言した。トルドー氏は、罪人の責任追及のためにブチャの出来事の詳細な捜査を実施することが重要だと強調し、ICCへの支援を続けていくと発言した。
ブリンケン米国務長官は、米国はウクライナや国際社会によるロシアの蛮行の記録と捜査の努力を支持していると発言した。ブリンケン氏は、ロシアの犯罪は民間人に対する全面的かつ体系的な暴力の一部だと指摘し、「その蛮行を犯した者は責任を追わねばならない」と強調した。
同氏は、ブチャやその他の町で起きたこと、現在もウクライナで起き続けていることは、看過できないとし、「米国は、自国民を守り、自らの主権、領土一体性、民主主義のために戦うウクライナを引き続き支えていく。私たちは、苦しむウクライナ人、殺されたウクライナ人のことを忘れない」と発言した。
ドゥダ・ポーランド大統領は、「リアルポリティク」という概念を新たなに定めるべきだとし、経済発展のために大規模犯罪に理解を示す姿勢は止めねばならないと強調した。ドゥダ氏は、リアルポリティクという概念は、「犯罪の不処罰は繰り返されない」という理解であるべきだと主張した。
ドゥダ氏はまた、ブチャは国際社会にとって「無辜の民殺害、通りに置き去りにされた遺体、集団墓地、人々の拷問、集団強姦の象徴となった」とし、「ブチャはこの戦争においてウクライナで犯されたロシアの犯罪の象徴であり続けるが、そのような場所はウクライナに多くある。それらはロシア兵の軍靴が立ち入った至る所にあるのだ」と強調した。
さらに同氏は、ブチャで行われた犯罪は「ロシアの世界(ルスキーミール)」の本質を反映しているとし、それは暴力、テロ、死だと伝えた。また同氏は、ロシアの現政権とドイツのナチス政権を比較し、ナチスも現在のロシアと同様にジェノサイドを行いつつ、自らは処罰されないと考えていたのだと指摘し、しかし、ナチスの終わりは戦場とニュルンベルグにて訪れたことを喚起した。同氏は、「同様の運命が、現在ウクライナにて犯罪の直接的責任を負う者を待っている」と伝え、3月17日のICCによるプーチン露大統領の逮捕状発布を喚起した。
キーウにてサミットに出席したサンドゥ・モルドバ大統領は、「私たちは、世界に対して、ロシアの犯罪について喚起し、私たちのコミットメントを支えるためにここにいる。私たちは、全ての犯罪、人類に対する犯罪、ウクライナの人々に対する犯罪が捜査され処罰されるようにするために、ブチャ宣言を支持しており、国際法廷の設置を支持している」と発言した。
同様にキーウにて出席したプレンコビッチ・クロアチア首相は、ウクライナが勝利するために「不可欠な3つのこと」について指摘した。プレンコビッチ氏は、1つ目は「ウクライナの人々、ウクライナ軍人の愛国心と国を守るという情熱」であり、2つ目はウクライナへの「恒常的な支援」だと指摘した。同氏は、支援は現在過去数十年で最も強力となっており、それによりウクライナ政府が現状でも自衛をしながら自国の社会・経済システムへと資金を投入できていると発言した。
そして、同氏は、勝利に必要な3つ目のこととして、「西側諸国の政府が、私たちの国々に団結があること、私たちが国内で内部分裂を怒らないように、ケアすることだ。国内分裂は、現存の政治的団結にダメージを与える」と述べた。
また、第1回ブチャ・サミットでは、日本の岸田首相もオンラインで参加し、ロシアがウクライナで行った戦争犯罪やその他の残虐行為が無処罰であってはならないと発言した。
写真:大統領府