アントニオ・コスタ欧州理事会議長

「公正な平和」が何を意味するかを決めることができるのはウクライナだけ

元ポルトガル首相であり、欧州連合(EU)の欧州理事会のアントニオ・コスタ新議長が、つい最近、正式に同職に就任した。彼の実質的な最初の一歩はウクライナへの訪問であったが、それはEUにとって激動の時代における同氏の優先課題を雄弁に物語るものである。

EUでは、この経験豊かな63歳の政治家とフォンデアライエン欧州委員会委員長との関係の肯定的なダイナミズムや、約40年間にわたる政治生活で培われてきた彼の交渉術によって、少なくとも今後2年半は、EUレベルでの効果的な意思決定プロセスが確保されるだろうと考えられている。

コスタ氏は、ウクライナ訪問時にウクルインフォルムに短時間の独占インタビューに応じ、ロシアの対ウクライナ戦争を激化や米国の政権交代などを背景とするEU結束に向けた課題について語った。彼は、ウクライナの加盟によってEUが得られる恩恵についての自身の見方や、ロシア連邦が始めた戦争における平和の達成についての考えについても共有した。

聞き手:イェウヘン・マチュシェンコ(キーウ)

写真:パウロ・バフムート


停戦が自動的に平和をもたらすと考えるのは誤り

あなたは、就任演説の時に、ウクライナにおける平和は国際法に基づいたものでなければならず、降伏を意味してはならず、侵略者への報奨となってはならないと述べていました。欧州はその目的を達成するために、他に何をすべきだと思いますか?

私たちは常に、財政的、政治的、外交的、そして軍事的次元でもウクライナを支え、ウクライナの側にいなければなりません。しかし、平和をいつ、どのように達成することができるかは、ウクライナだけにかかっていることです。

多くの人が、何らかの停戦合意が達成されたら、平和は自動的にやってくると誤解しています。強調したいのですが、私たちが必要としているのは「公正かつ永続的な平和」です。そして、その平和の永続性を確保する目的で、「公正な平和」とは何かを定めることができるのは、ウクライナだけなのです。

私たちはNATOの「欧州の柱」を発展させなければいけない

あなたは、グローバルなレベルでの安全保障に関して、EUは安全保障・防衛分野でより自律的になるべきだと話していました。現存の脅威の中、その自律性に関するあなたの見方はどのようなものですか?

私たちは、NATOの「欧州の柱」を発展させなければいけません。私は、それは大西洋間レベルでよりバランスの取れた関係を構築する上で良い貢献となると思っています。私たち皆が知っているように、米国は(編集注:欧州の他にも)別の地政学的優先課題を抱えています。そのため私たちは、自分たちの安全保障と防衛への支出分担の再配分をすべきなのです。

2月の初め、私たちは、EUの首脳が参加するブレインストーミングの日を開きます。私は、NATOのマルク・ルッテ事務総長を同会合への出席に招待しますし、また別のところへは、キラ・スターマー英首相を招待し、両者が私たちの考察に加われるようにします。

ウクライナの貢献はEUの競争力にとって非常に肯定的なものとなる

マリオ・ドラギ氏の9月のレポートに書かれているように、あなたは、ウクライナがEUに加盟した場合に、欧州が自らの競争力の脆弱性を克服する上でウクライナが貢献することができると思いますか? 天然資源、農業、エネルギー、新技術、そしてもちろん、防衛の分野において。

そこには、さらに高度修練労働力という要素も加えることができます。ウクライナがEU加盟国になれば、それらあらゆる分野において、EU全体の競争力にとってウクライナの貢献が確実に非常にプラスになるでしょう。

ウクライナへの軍の潜在的派遣に関してはEUは加盟国の決定を尊重せねばならない

北朝鮮軍の関与を含め、ロシアからの戦争のエスカレーションが起きている中、エマニュエル・マクロン仏大統領が最終的に何らかの形でウクライナに外国軍を派遣するというアイデアについて、ブリュッセルでは、現時点でどのような雰囲気がありますか? また、ワシントンでは、何らかの衝突ラインに沿って停戦を確保するために欧州の戦力を展開する可能性も議論されています。本件に関して首脳たちの立場に何らかの変化が看取されていますか?

それは、EUの枠組み内の議論対象ではありません。それは、様々な加盟国間の議論対象です。そこで私たちは、議論と加盟国が自分たちの考えに応じて採択する決定を尊重しなければなりません。

EUは制裁を通じてロシアの戦争遂行能力を縮小したいと考えている

現存の制裁はロシア経済を弱めていますが、しかし、ロシアが戦争に資金を投入し続けることを妨げるには不十分であり続けています。ロシアが石油製品の販売で収入を得るのを助けている影の船団のタンカーに真剣に注目したり、ロシアの軍事機構を生かしている同国の原子力分野に制裁を科したりすべき時が来ているのではないでしょうか?

現在私たちはすでに15回目となる対露制裁を策定しています。それは2つのことを意味します。第1に、私たちは制裁体制を改善することができるし、私たちはいつもそうていてきたということ。なぜなら、私たちがかつて1つ目の制裁を始めましたが、今や15回目の制裁に達しているのですから。

私たちは、ロシアが利用している現在の抜け穴を塞ごうとしています。私たちは、ロシアの戦争遂行能力を縮小するべく、より効果的に活動し、ロシア経済への圧力を強めたいと思っています。

EUは、多様な視点を持ちながらも、集団的決定を下している

ベテランの交渉者として、あなたはEU首脳との非公式な会合と公式な戦略的協議とを組み合わせる意向をお持ちです。あなたは、EU全加盟国間の重要課題に関して結束を確保するための主な挑戦は何だと思っていますか?

私たちは現在、非常に多くの挑戦に直面しており、どれが主要な挑戦なのかを定める余裕がありません。

その挑戦の中にあるのは、ウクライナ、私たちの競争力、安全保障、防衛、移民、民主主義…、非常に多いです。しかし、私の役割は、実はもうそれほど複雑ではないのです。なぜなら、EUにおいて最も重要なことは、共にありたい、共に働きたい、共に結果を出したいという共通の願いだからです。

27の加盟国を見れば、27の異なる歴史、27の異なる文化、地理的なニュアンスを含め、世界の出来事への27の異なる視点のある人々があることを目にします。

私たちが何かについて意見の相違があるということにニュースを探すべきではありません。最も大切なニュースは、私たちが集団的決定に達成しているということにあります。私たちは、多様性がある中でも、それらの決定を採択しているのです。

その難しい仕事におけるあなたの成功を記念するばかりです。就任初日にウクライナへお越しいただき、改めてありがとうございます。

ありがとうございました。