調査報道チーム、ウクライナ女性への性暴力について話すロシア人男女の身元を特定
15日、ラジオ・リバティが調査報道番組を公開した。
SBUは4月12日に、ロシア兵と配偶者の女性とされる2名の通話の一部を公開していた。その際、女性の声は、男性に対し、笑いながら「そこでウクライナのばあさんを強姦してきなよ。で、私には何も言わないでね。わかった?」と話していた。
SBU公開の通信傍受された通話記録
このSBUの発表を受け、記者たちは、ウクライナの治安機関関係者を通じてこの2名の電話番号を入手し、番号からSNSを通じて2名の身元を特定したという。番組にて、記者たちは、この2名の電話番号がロシアで人気のSNS「VK」の登録に使われていることを判明させ、そこから2名の身元を特定している。2名は、男性が27歳のロマン・ブイコフスキー(Роман Быковский)、その配偶者の女性がオリガ・ブイコフスカヤ(Ольга Быковская)(旧姓:ピヒャソヴァ)。二人とも露オリョール州の出身。そして、このブイコフスキーは、ブイコフスカヤとのこのやりとりをした時には、ウクライナ南部ヘルソン州にいたという。
なお、夫に「ウクライナ女性の強姦」を勧めたオリガ・ブイコフスカヤは、VKのプロフィールの「人生で大切なもの」との欄に「家族と子供」と書いていたという。
記者たちは、ブイコフスキーが2016年に、ロシアの国家親衛隊軍のエリート部隊とみなされているジェルジンスキー独立作戦任務師団に所属していたことを特定。さらには、およそ2018年頃から、この男性はこの女性と生まれた子供とともにロシアが占領するウクライナ領クリミアへ引っ越したという。またブイコフスカヤはクリミアにて、子供の面倒を見る仕事を探していた。またブイコフスキーは、2018年夏以降第108親衛空中襲撃連隊への契約兵となっている。なお、国際調査グループ「インフォームナパーム」は、この旅団は、2014年のロシア軍によるクリミア半島制圧に参加した部隊であることを明らかにしている。
そして、記者たちは、ブイコフスキーは2022年、クリミアの北に位置するヘルソン州への戦闘に参加したと伝えた。つまり、子供とともに家で待つ妻のブイコフスカヤは、その時に夫にウクライナ人女性の強姦を薦めたのだと説明されている。
記者たちはまた、入手した電話番号でブイコフスキー夫婦に直接電話をかけている。番組内では、「ロマン・ブイコフスキー氏は、それが自分の姓名であることを認めた。ヘルソン州にまだいるかとの質問されると、彼は否定し、現在はセヴァストーポリにいると答えた。彼は、電話相手が記者だと知ると、SBUが公開した声は自分のものではないと発言した。ただし、その彼の電話越しの声は、通信傍受に出てきたような声だった」と説明されている。
電話をかけた際の配偶者のオリガ・ブイコフスカヤの声もまた、SBUが公開した通信傍受の通話で聞かれた声と完全に一致している。彼女は、記者に対して、夫がセヴァストーポリにいることを認め、彼は負傷から病院で治療を受けていると発言した。その後彼女は電話を切っている。SNS上では、ブイコフスキーもブイコフスカヤもメッセージに返事をしなかった。その電話の後、ブイコフスカヤはVKの自身のアカウントを完全に削除したという。
ロシア人男女を特定した番組「スヘーミ」(ウクライナ語)
なお、2月24日以降、ウクライナでは、ロシアによる全面的侵略が続いている。ロシア軍に占領された地域からは、ロシア軍人によるウクライナ国民に対する性暴行について多くの報告が届けられている。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は4月3日、ロシア軍が占領するチェルニヒウ州、ハルキウ州、キーウ州で、民間人に対して行った戦争犯罪行為に関する報告書を公開した。同報告書には、ハルキウ州などにおける性暴力事例が報告されている。
デニーソヴァ・ウクライナ最高会議(国会)人権問題全権は、4月に国連機関に対して、性暴力の事例の捜査を要請。同氏は、ロシアにより占領されているウクライナ領にて大規模な性暴力事例が報告されているとし、とりわけ、キーウ州ブチャ市では、14〜24歳の約25名の女性がロシア軍人により地下にて長期にわたり拘束された上で、性暴力を受けていたと報告している。