ロシア軍、昨年12月から投降ウクライナ軍人を少なくとも20人処刑=HRW
HRWが5月2日付報告で伝えた。
HRWのベルキス・ヴィレ危機・紛争局副局長は、一連の出来事は戦争犯罪として捜査されねばならないとし、なぜなら「降伏しようとしている負傷したウクライナ兵を冷酷に銃撃する超法規的処刑や殺人は、国際人道法(戦時国際法)で明確に禁じられている」からだと指摘した。
報告では、HRWがウクライナ兵が少なくとも12人明らかに超法規的に処刑された3つの事例を調査対象とし、2023年12月2日と27日、2024年2月25日にソーシャルメディアに投稿されたドローン撮影による動画を検証・分析したと書かれている。そしてHRWは、「3つの事例すべてで、兵士たちは明確な降伏の意思表示を行っており、もはや敵対行為に参加していないため、国際人道法では戦闘外にあるとみなされ、攻撃の対象となってはならない」と説明した。
また、専門家たちは、これら3件のうち2件の現場を映像から特定したが、残り1件は動画に詳しい地理情報が含まれていなかったため、正確な場所の特定には至らなかったという。HRWが調査した4つ目の事例は、2月19日にソーシャルメディアに投稿されたもので、ロシア兵2人が降伏した非武装のウクライナ兵3人を処刑する様子のものだという。動画を投稿したアカウントは事件の場所を明記しているものの、HRWはその場所を独自に確認できていないと伝えている。5つ目の事例は、ウクライナ兵1人へのインタビュー、2月18日にあるテレグラム・チャンネルに投稿された動画、犠牲者の1人の家族へのインタビューを含む詳細な報道をもとに調査したとあり、「これらの情報は、この事件で兵士6人が処刑されたことを示唆するものの、当時の状況はあまりはっきりしていない」と書かれている。
これら5件の内の1つ、2月25日の事例では、検証済みのドローン動画によると、少なくともウクライナ兵7人が2つの畑の間に生える木々に掘られた塹壕を出て、防弾服を脱いでいて、少なくとも兵士1人はヘルメットも取り、ウクライナ兵全員がロシア兵5人に銃口を向けられてうつ伏せになっていたという。その上で、「その後、ロシア兵3人が明らかに降伏したウクライナ兵に向かって背後と両側から発砲した」と報告されている。
報告には、腕と脚にまいた赤色のテープで、発砲したのがロシア兵であることが識別できると指摘されている。ウクライナ兵のうち6人はうつ伏せのままだったが、銃撃された衝撃の反動で明らかに身体が動たという。さらに、残りの1人はもう一度塹壕に入ろうとしたが、再び銃撃されたという。事件はドネツィク州イヴァニウシケ村付近で起きたと説明されている。
HRWは、国連ウクライナ人権監視団が昨年3月に発表した報告書には、全面侵攻発生から1年間でロシア軍とロシア傭兵集団「ヴァグネル」が15人のウクライナ人捕虜を処刑したことが記録されていることを喚起している。また、2023年2月から7月までを対象とする定期報告書では、国連はウクライナ人捕虜6人の超法規的処刑を記録していおり、さらに2024年3月に発表されたフォローアップ報告書は同年1月から3月に、少なくとも32人の拘束されたウクライナ兵の処刑が報告されたことを確認していると書かれている。
HRWは、4月22日に、ロシアのショイグ国防相に書簡を送り、上記の事件の詳細と、降伏したウクライナ兵を捕らえるのではなく殺害するようロシア軍に命令した事実があるか尋ねたが、現時点で回答はないと伝えた。
これに先立ち、4月9日、ウクライナ検事総局のユーリー・ビロウソウ武力紛争下犯罪対策局長は、ロシア軍が実行した54人のウクライナ人捕虜の処刑に関する情報があると伝えていた。