調査グループ「ベリングキャット」、マレーシア航空機MH17撃墜の関与者を独自発表
同日、ベリングキャットが、国際共同捜査チーム(JIT)の発表に先立ち、ウェブサイト上で発表した。
ベリングキャットが容疑者として発表したのは、以下の12名。
・イーゴリ・ギルキン(通称:ストレルコフ)。2014年、「DPR国防相」を自称していた人物で、調査情報によれば、元ロシア連邦保安庁の大佐。ギルキンは、傍受された2014年7月18日のセルゲイ・ドゥビンスキー氏との会話が公開されている。その会話は、地対空ミサイル・システム「ブーク」を武装集団が支配するウクライナ領からロシア領へ戻す内容となっている。MH17撃墜に関係する武装集団の大半がギルキン氏の部下であったことから、ギルキン氏も「ブーク」のロシアからの供給について完全に把握していた可能性が大きい。
・セルゲイ・ドゥビンスキー(通称:フムリー)。2014年、「DPR情報総局長官」を名乗っていた人物。ドゥビンスキー氏をはじめとするグループが、7月17、18日に「ブーク」の武装集団支配地域からの移動をコーディネートした他、ブークがしようされたスニージュネ南方にて同ミサイル発射の際の安全確保を行なっていた。
・オレグ・プラートフ。ロシア連邦軍元大佐。通称「ギュルザ」として知られていた人物であり、傍受された会話に名前が出てくる。プラートフ氏は、おそらく、スニージュネ南方での「ブーク」発射時の警備に関与している。
・レオニード・ハルチェンコ(通称:クロート)、「DPR情報総局第2課」の「クロート諜報大隊」の指揮をとっていた人物。ベリングキャットは、ハルチェンコ氏はスニージュネ南部の「ブーク」発射地点の警備に関与していたと指摘している。また、同人物が「ブーク」のドネツィク市から発射地点までの移動と、事件後に「ブーク」を発射地点からロシアに「避難」させる調整を行なった可能性がある。
・エドゥアルド・ギラゾフ(ハルチェンコの部下、通称:リャザン)。マレーシア航空機撃墜後、「ブーク」の乗員をスニージュネにいたハルチェンコ指揮官の元へ連れて行った人物。「ブーク」発射地点の警備を行なっていた可能性もある。
・オレグ・シャルポフ、諜報中隊指揮官。同人物は、2014年7月17日13時09分のハルチェンコ(「クロート」との電話による会話が通信傍受されている。この会話にて、シャルポフ氏は、ハルチェンコ氏にMH17を撃墜した「ブーク」のある地点、スニージュネ南部にはどのように行けば良いか尋ねている。この会話は、MH17撃墜の2時間以上前のものであり、シャルポフ氏がミサイル発射に関与していた可能性は大きい。
この他、イーゴリ・ベズレル(通称:ベス)、セルゲイ・ポヴァリャエフ(通称:ボツマン)、ヴァレリー・ステリマフ(通称:ナエムニク、ナイマネツ、バーチャ)、イーゴル・ウクライネツ(通称:ミネル)、アレクサンドル・ホダコフスキー(通称:スキフ)、アレクサンドル・セメノフ(通称:サン、サニチ)の名前が掲載されている。
なお、これまでの報道にあるように、19日、国際共同捜査チーム(JIT)がMH17撃墜の容疑者の起訴を発表した。その際に名前が発表されたのは、レオニード・ハルチェンコ、イーゴリ・ギルキン、セルゲイ・ドゥビンスキー、オレグ・プラートフの4名。同時に、フレッド・ヴェステルベク・オランダ検事総長は、「今回の発表は、一部である」と述べていた。裁判プロセスの開始は、2020年3月9日だと発表されている。
マレーシア航空機撃墜事件とは、2014年7月17日、アムステルダムからクアラルンプールへ向かっていたマレーシア航空機MH17がウクライナ東部ドンバス地方上空で武装集団により撃墜され、乗客・乗員合計298名全員が死亡した事件をいう。
2016年9月、国際共同捜査チーム(JIT)は、同事件の技術捜査の結果として、同航空機が、親露武装集団支配地域から地対空ミサイルシステム「ブーク」により発射された弾頭「9M38」により撃墜されたことを判明させていた。
同時に、民間調査グループ「ベリングキャット」は、MH17を撃墜した「ブーク」がロシア軍第53対空旅団発のものであることを判明させていた。ベリングキャットは、ソーシャル・メディアとオープンソース情報の独自の分析を通じて、MH17撃墜に関与した20名のロシア軍人を特定させた報告書を発表した。これら軍人の名前が写真付きで示されているこの報告書は、オランダの検察に渡されている。
2018年5月24日には、JITは、MH17を撃墜したロシアのミサイルの破片を公開しつつ、ミサイルがロシアのクルスクを拠点とするロシア軍第53対空ミサイル旅団に属するものであることが判明したと発表した。