国境なき記者団、ウクライナの偽情報対策法案を批判

国境なき記者団、ウクライナの偽情報対策法案を批判

ウクルインフォルム
国境なき記者団(RSF)は、ウクライナにて提出された偽情報対策法案を問題点を警告するメッセージを発表した。

国境なき記者団のウェブサイトにメッセージが掲載された

メッセージには、「国境なき記者団は、提案された法案が情報の自由に対して有害となり得ることを懸念しており、ウクライナ政府・立法府のための勧告を提示する」と書かれている。

同団体は、同法案は、既にウクライナ国内にて、マス情報研究所を含む、影響力のある報道関係団体・市民団体によって「危険」「受け入れられない」ものだと表明されており、これらの団体は政権に対して、同法案を再作業のために撤回するよう要求していることを指摘した。また、これらの懸念の根拠として、同法案の定める諸方策が、情報空間のコントロール獲得、記者の権利侵害のために利用することが潜在的に可能だと説明されている。

同団体は、「現在の形では、同法案は、非効果的であり、更には非生産的なものとなりかねない。なぜなら、同法案は、潜在的に思想・信条の自由を深刻に制限し、報道の自由を破綻させかねないものだからだ」と述べている。

その上で同団体は、とりわけ同法案が偽情報拡散の刑事責任を定めていることを指摘しつつ、「偽情報」の定義を詳細化することを提案、その理由として、同用語の自由な解釈が、情報への自由なアクセス、自由な表現という記者の権利を圧迫することに繋がりかねないからだと説明している。

同団体は、法的責任追及の適用が可能となるのは、情報が意図的に虚偽とされ、大衆をだますため、あるいは、社会の考えを操作するため、そしてその目的にて大規模に拡散されたことが、裁判手続きによって証明された場合に限定すべきと指摘した。加えて、偽情報拡散の罰則に含まれている禁固刑を除外するよう要求している。

同団体はまた、ソーシャル・メディア利用者に対して、拡散の前に情報を確認することを要求する案に対して批判的な態度を示しており、その理由として、政権が「偽情報」とみなし得る情報の拡散をもって、あらゆる人物を起訴できることが可能になるからだと指摘している。団体は、情報の確認は、記者にとっての専門的義務であり、一般市民の義務とはなり得ないものだと説明している。

更に同団体は、いかなる政権機構もある情報が真実かそうでないかとの認定をもって責任を追及することはできず、それを裁判プロセスなくして罰することもできないと指摘している。そして、ウクライナ政権に対して、偽情報を調査する機関の権限を明確に定めること、同機関が表現や報道の権利を侵害することがないよう保証することを呼びかけている。

同団体は、国家機関にコンテンツ全体に関する決定権を付与する代わりに、情報のとりまとめ、分類、優先付けを行なっているメディア・プラットホームに対して、意図的な情報操作やヘイトスピーチとの積極的な闘いをすることを義務付けさせることの方が有効だと勧告している。

同団体はその他、メディアの「信頼インデックス」導入の案に対しても批判的に評価しており、特にそのような基準が政権代表者によって設けられることの問題点を指摘している。

代わりに、同団体は、メディアの専門的基準・倫理規範を通じた責任問題を解決する自己規制機構設置のための条件を作ることを提案している。例として挙げられているのが、欧州報道協会(EBU)、グローバル編集ネットワーク(GEN)、AFPとのパートナーとして設置された「ジャーナリズムへの信頼イニシアティブ」だと説明されている。同イニシアティブは、18の評価指数を設けており、とりわけ、編集・修正ポリシーやコンテンツ分類が挙げられ、例えば、「スポンサー」「個別の見解」といったマークを付けること、情報精確度の基準を設けていることが指摘されている。

同団体は、2019年の「世界報道の自由指数」では、ウクライナは180か国中102位であることを喚起している。

これに先立ち、1月20日、文化・若者・スポーツ省は、国家情報安全保障・信頼できる情報へのアクセス権法案、通称「偽情報法案」を公開し、報道関係者、関連研究所・市民団体、メディア問題専門家、法律家に同法議論に加わるよう招待していた。

同省はまた、同法案は、ロシア連邦のハイブリッド侵略の条件下、ウクライナの情報分野における偽情報との闘いのメカニズムを適用し、国民のメディア・リテラシーを高めることを通じて、国民の信頼でき、バランスのとれた情報へのアクセス権を保障することを目指すものだと伝えていた。


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