オランド前仏大統領「この戦争の解決にかかっているのは、ウクライナの運命だけではない」
オランド前仏大統領がオーストリアのシュタンダート紙へのインタビュー時に発言した。
オランド氏は、「紛争をすぐに終わらせるには、あまりに多くの犯罪、あまりに多くの破壊、あまりに多くの犠牲者がすでに出てしまっている。プーチンは、より多くの兵士を動員することでウクライナ領の一部を少しずつ奪えると思っている。たとえ兵士の士気が低かろうがだ。ウクライナ人は、これに対して、クリミアを含む彼らの全ての領土を取り返したがっている。それゆえ解決は、外交的となる前に、軍事的とならねばならない。そこにかかっているのは、ウクライナ領以上のものである」と発言した。
同氏はまた、ウクライナがこの戦争で優位に立てば、プーチンが後退するだけではなく、他の権威主義体制に対して、力を行使しても自己主張することはできないことを示すことになり得ると説明した上で、「それが重要な成果となる」と指摘した。同時に同氏は、プーチンが戦前(編集注:全面侵略前)よりも1平方キロメートルでも領土を多く奪った場合は、その他の国も同様に領土獲得は可能だと考えるだろうと発言した。
また同氏は、「時間の要因が決め手になると思う」と述べ、「プーチンは、欧州の人々がウクライナ支援に疲れること、エネルギー価格への制裁が徐々に世論を疲れさせていくことに賭けている。彼は、米国が2024年にジョー・バイデン以外の異なる大統領を選出することを望んでいる」との見方を示した。その際同氏は、「私は、ドナルド・トランプが1日以内にプーチンと問題を解決させてみせると主張するのを聞く時、彼がすぐにプーチンに望む物をあげてしまうことを恐れる」と発言した。
さらに同氏は、現在フランスでは親露勢力が沈黙しているが、「ウクライナの状況が変わったら、極右はあらゆる平和主義者とともに、ウクライナに武器を供与すべきではないとか、ロシアとできるだけ早く交渉テーブルにつくべきだと、一番に言い出すだろう」と予想した。
そして同氏は、「私たちは、ウクライナを軍事的に支えねばならず、同時に私たちが提供する武器や、私たちが提供する資材がロシア領で使われないようにしなければならない。私たちは、エスカレーションを回避せねばならないが、しかし、ウクライナ人が自国解放、自国の領土一体性回復のために戦う限り、私たちは完全に彼らの後ろにいる」と発言した。
なお、オランド氏は、かつてメルケル前独首相とウクライナとロシアの間のミンスク諸合意の締結に際して仲介を担った人物。これに関連し、オランド氏は、プーチン露大統領を「驚くべき嘘つき」だと形容した。同氏は、「政治の世界では嘘はありふれているが、しかしプーチンの場合はそれが驚くべきレベルに達している。彼は(シリアの)バッシャール・アル・アサドが化学兵器を使っていないと何度言っただろうか? 彼はウクライナの分離主義者とは繋がりがないと何度言っただろうか? 彼がその者たちを武装していたのに? 彼はヴァグネル軍との繋がりはないと私に明言しただろうか? そのリーダーであるプリゴジンが彼に仕えていたにもかかわらずだ」と強調した。