ウクライナ、今日から国際刑事裁判所に関するローマ規程の締約国
ICCの建物の中に、青と黄のウクライナの国旗が加えられた。ウクルインフォルムのハーグ特派員が伝えた。
ICCのファディ・エル=アブダラ報道官は、「ウクライナは2025年1月1日に正式なICCの締約国となる。それは、今後同国はその国際条約の完全な締約国となり、締約国によって定められているあらゆる権利と義務が生じることを意味する。その中で最も重要なのは、予算確定、ローマ規定の変更や修正の採択、裁判官、将来の検察官、副検察官、選出に際しての投票権である。それらは将来の国際刑事法を形作るのに一定程度役立つものだ」とウクルインフォルムに対してコメントした。
また同氏は、ウクライナの例が他の国々を鼓舞することを期待していると述べた。その際同氏は、「私たちは、この新しい批准が、ICCへの信頼の証であるウクライナの例を他の国々が倣(なら)うための扉を開くことになることを願っている。他の国々がまたそれをシグナルとして受け取り、それを支持し、ローマ規程の普遍性という夢の実現に私たちを近付ける活動に参加していくことを期待している」と発言した。
特派員がICCにウクライナ出身の裁判官が登場する可能性について質問すると、エル=アブダラ氏は、「ウクライナが締約国として候補者を推薦することは全くもってあり得ることだ。その後、それは総会の投票にかかっていく。ICC裁判官には、とりわけ国際法や警報に関する一定の経験の要件がある。また、自国で裁判官の最高職としての資格も有していなければならない。また、ICC裁判官は3年ごとに6人の選出が行われる。よって、私たちはもちろん、ウクライナが裁判官候補者推薦を含む、ICCの協力と支援のあらゆる可能な場面に参加し、またICCのウクライナの同僚の数の増加に貢献することを期待している」と伝えた。
また同氏は、ICC裁判官の要件の1つが、ICCの公用語である英語かフランス語の少なくともどちらか1つを自由に運用できることが含まれているとし、両言語とも知っていれば有利だが、しかし、少なくとも1つは必ず必要だと説明した。
その他同氏は、「ICCは国家を相手に事を構えているのではなく、常に犯罪に対する個人の責任を問うていることを理解することが重要だ。誰が容疑者を起訴できるのか? 国家ではなく、ICCの検察官だ。締約国は、検察官に具体的な紛争ないし特定の犯罪について付託することができ、すると検察官が、捜査を開始するかどうかを決めたり、どのような犯罪がICCの管轄下に入るかを確認したりすることができるようになる。集められた証拠をもとに、検察官は、起訴を決定することができる。それは、逮捕状や出廷召喚状の発付のために裁判官に要請することを意味する。それはICC検察官が決めることだ。私たちは、ウクライナにおける状況に関する捜査がすでに始まっていることをよく知っているが、しかし、強調したいのは、国家が捜査を行うのではなく、そのような決定は検察官が下すということである。ただし当然、全ての国の協力は非常に重要だ。なぜなら、それによって検察官は効果的かつ迅速に証拠を集めることが可能になるのだから」と説明した。
さらに同氏は、「ウクライナは以前からICCの管轄権を認めていた。それを基に、現在進行中の捜査が始まったのだ。その一環で、ICCの検察官はすでに複数の捜査を始めており、新しい事件や起訴が主導される可能性もある。ウクライナによるローマ規程の批准は、新たな捜査を開始せねばならないというわけではない。なぜなら、捜査は、以前のウクライナの声明を根拠にすでに始まっているからだ」と伝えた。
同時に同氏は、ウクライナによるローマ規程批准により、予算編成への財務参加といった新しい義務も発生しているとし、ICCの予算は各国の経済規模や人口を考慮した上で、ICC締約国会議によって承認されると説明した。
その際同氏は、「ICC予算は総会で承認される。つまり、ウクライナを含む125か国が承認する。予算は、約1億9000万ユーロだ。そして、その負担は全締約国間で分担されるが、しかし、一定の割合がある。予算は、国連の計算式と同様、つまり、国の経済規模や人口が考慮される。そのため、例えば、日本とドイツは、ICC予算への拠出額が最大級の国である。今私は、ウクライナの拠出がどれぐらいになるのかについて具体的な数字を有していない。しかし、ウクライナの経済規模や人口に比例したものとなるだろう」と発言した。
Today, the #ICC #RomeStatute enters into force for #Ukraine, making it the 125th State Party.
— Int'l Criminal Court (@IntlCrimCourt) January 1, 2025
#MoreJustWorld pic.twitter.com/aYugBrJJWD
これに先立ち、ウクライナ最高会議(国会)は2024年8月21日に、ICCに関するローマ規程の批准に関する法律を採択していた。
なお、ウクライナは、2000年1月20日にローマ規程に署名していたが、2024年まで批准は行なっていなかった。
現在ローマ規程を批准しているのは125か国。ロシアと米国は、ローマ規程に署名したことがあるが、その後署名を撤回している。中国、インド、ベラルーシ、トルコ、カザフスタンといった国は署名も批准もしていない。日本は2007年に批准している。