ウクライナの反転攻勢は誤算や装備の不十分な供与等で鈍化した=米紙
米国のワシントンポスト紙は、ウクライナの反転攻勢が鈍化した原因は包括的なものであり、西側同盟国やウクライナの司令部の誤算や、ウクライナ軍が攻勢で優位となる上で必要な装備が十分に提供されていないことが含まれると報じた。
4日、ワシントンポスト紙が米国、英国、ウクライナの政権関係者、軍人、専門家の評価をまとめた分析記事を掲載した。
記事には、「ウクライナ軍、米国軍、英国軍の将校は、遂行計画を組むべく、8回にわたり大型の戦術ゲームを実施した」と書かれている。
同時に、記事には、短期間で、なおかつ、現代的作戦にとって不可欠な空軍力をウクライナに供与することなく、ウクライナ軍が西側型の軍にどれだけ変貌できるか、という点で米国が見誤ったとの見方が示されている。
米国とウクライナの政権関係者は、戦略、戦術、時間の観点で意見が異なっていたという。米国防総省は、ロシアに防衛線を強化させないために、4月中旬にウクライナの攻勢が始まることを望んでいたが、他方で、ウクライナ側は、追加的武器と訓練がないと攻勢開始の準備はないと主張し、ためらっていたという。
また、米国の司令部は、その時点でウクライナが受け取っていた装備でもロシアの防衛線への攻撃は可能だと隠していたという。記事には、シミュレーションでは、ウクライナ軍は最善で60〜90日間でアゾフ海に到達でき、ロシア軍を南部で分断できると示されていたと書かれている。
他方で、米国の情報機関は、米軍司令部より悲観的な評価をしていたという。情報機関は、ロシアが冬と春に築いた何層もの防衛線を考慮すると、反転攻勢が成功するチャンスは五分五分だと考えていた。
記事には、「攻撃開始が近づくにつれ、ウクライナの軍事指導者たちは、ウクライナが壊滅的な損害を被ることを恐れ、一方、アメリカ政府関係者は、決定的な攻撃がなければ、最終的に損耗はもっと増えるだろうと考えていた」と書かれている。
また、戦闘機F16をはじめとする、ウクライナ軍人への訓練アプローチに関しても解説されており、その際米国防総省関係者による「もし操縦士の一団へのF16訓練を3か月間にしたら、彼らは初日で撃墜されているだろう。なぜなら、ウクライナにおけるロシアの防空は非常に密で、戦闘能力が高いからだ」との発言が紹介されており、そのために、然るべき訓練とインフラの展開を確保する決定が下されたのだとし、それには1年かそれ以上かかるのだという。
その他、ウクライナ軍は反転攻勢を開始すると、ウクライナ軍はロシアが築いた防衛線の強固さを感じたと書かれている。記事には、「ウクライナ軍は、地雷原があるのは想定していたが、その密度に衝撃を受けた。大地は、爆発物で埋め尽くされており、いくつかは重ねて埋められていた程だ」と記述されている。さらに、ロシアは、ミサイルなどの対戦車兵器も積極的に使用し、それによりウクライナ軍の進軍を鈍化させており、反転攻勢に参加している多くのウクライナ軍人も戦闘経験を有していなかったとも書かれている。
記事には、「反転攻勢開始から約6か月、作戦は漸進的な成功の戦争へと変貌した。第一次世界大戦のような湿った塹壕がウクライナの東部と南部を覆い、偵察無人機と攻撃無人機が空に集まっている。モスクワがウクライナの町々の民間施設をミサイルで攻撃すると、キーウは西側製ミサイルや自国製製品を使って、モスクワやクリミアや黒海といった前線より遠くの地点を攻撃している」と書かれている。