西側はプーチンが合理的だと誤解している=英国専門家

英国のロンドン大学キングス・カレッジでロシアのプロパガンダを研究しているジェイド・マクグリン(Jade McGlynn)博士は、プーチン露大統領は自らのリソースのことを気にかけてはいるものの、対ウクライナ戦争では合理主義ではなく、特殊なイデオロギーをもとには行動しているのだが、西側ではそのことが理解できていないと指摘した。

ジェイド・マクグリン氏がウクルインフォルムへのインタビュー時に発言した(リンク先はウクライナ語)。

マクグリン氏は、「人々は、彼(プーチン)が実は実用主義的な人間だと信じたがっている。ある意味、西側は、周りの人々は皆合理的であり、私たちは今ポストイデオロギー世界にいて、人々はお金のことだけ気にして、彼らに原動力となる考え、動機、目的は一切ない、かのように間違って予想している。その点で、西側はロシアについて誤解しているのだ。確かに、プーチンや(ロシアの)エリートは自らのリソースについて気にかけているが、しかし、その背後には特殊なイデオロギーが存在しているのだ」と発言した。

また同氏は、ロシアが「ウクライナとの協議の準備がある」かのようなシグナルを送っているとする、最近の西側報道機関の間で拡散されている「見方」について、同氏は、ロシアの行動やプーチンの発言がその見方に真っ向から矛盾していると指摘した。

同氏は、「時々、それらロシア研究者はロシア語が読めないのではと思わされる。というのも、彼(プーチン)は最近、自らのさらなる征服意図についてかなり率直に発言したのだ(編集注:1月16日のロシア地方自治体との会議の際の発言)。彼は、自らの帝国的目的を全く隠していない。おそらくあなたは、あのロシア人とウクライナ人の歴史的一体性の話を読んだであろう? それは全てオープンでアクセス可能だ。よって、(かたや非常に激しく町を攻撃しながら)『プーチンは何らかの静かなシグナルを送っている』というニューヨークタイムズ紙の命題(編集注:2023年12月23日の記事)は、ロシアを大国だとみなしており、クリミアを実質的にロシアのものだと考えている人の集団から出て来ているものだ」と説明した。

そして同氏は、そのような人々は、クリミアを軍事的手段で脱占領することはロシアにとって「レッドラインを越える」ものと受け止められると信じているような人たちだと指摘しつつ、「しかし、ロシアの『レッドライン』はこれまでにどれだけ越えられたのだろうか? そして、その後何かが起きただろうか?(中略)よって、私は、そのような命題を拡散する人々は、プーチンとは何らかの合意がまだ可能だと信じたがっている人々なのだと思っている」と発言した。

さらに同氏は、ウクライナはロシアの歴史ナラティブに深く組み込まれてしまっていると指摘した上で、同氏の考える西側が気が付いていない要素を指摘した。「この戦争は、単なる一部の領土以上のはるかに大きいことについての戦いである。『国民』すらよりもはるかに大きなものだ。『ウクライナ』という考え、ウクライナが自由で、主権を有していくための戦いであり、時々正しくない決断を下すかもしれなくても、それでもそれがウクライナの決断であることのための戦いだ」と発言した。