ロシア軍、ハルキウ攻勢用部隊を編成 ただし制圧に十分な兵力なし=戦争研究所
米国の戦争研究所(ISW)は、ロシアがクルスク州へと部隊を再配置し、新しい戦力を編成しているとし、それはおそらく今後のハルキウへの大規模攻勢作戦のためのものだろうと指摘した。同時にISWは、ロシア軍にはハルキウを制圧するための戦力が不足しているとも評価している。
ISWの5日付報告書に書かれている。
報告によれば、ロシア軍はウクライナ北東部とハルキウ州に対する今後のあり得る攻勢作戦のための作戦上重要な戦力を集めるべく、第76空挺師団の1個大隊をクルスク州へと再配置したという。
ウクライナの軍事オブザーバーのコスチャンティン・マショヴェツ氏は、ロシア軍がベルゴロド州、クルスク州、ブリャンスク州に約5万人の兵力を集中させていると伝えた。
また、マショヴェツ氏は、ロシア軍がレニングラード軍管区の要素から北方軍集団を編成していると指摘しており、同軍集団は主にベルゴロド・ハルキウ作戦方面で活動するためのものだと伝えている。
同氏はさらに、ロシア軍は第30自動車化狙撃連隊(レニングラード軍管区第44軍団第72自動車化狙撃師団)と第128独立自動車化狙撃旅団の兵力と機材を北方軍集団へと再配置したと伝えた。同氏は、ロシア軍はクルスク州の孤立した地区の鉄道駅で北方軍集団への再配置のための部隊や装備を降ろすふりをしているとし、それは後ほどベルゴロド州の展開地域へと行進するためだろうと指摘している。
加えて同氏は、第30自動車化狙撃連隊の分隊は最初はクルスク鉄道駅に再配置されたが、その後ベルゴロド州へさらに再配置されているとし、それはおそらくハルキウ州近郊の集結場所へ向かわせるためだろうと指摘した。
その他同氏は、ロシア軍が最近、チェルニヒウ州、スーミ州、ハルキウ州といったウクライナ北東部の国境隣接地域に対して、空爆、無人機・ミサイル攻撃を強めていることを喚起した。
その上で同氏は、ISWがこれまでに評価しているのと同様に、ロシアの北方軍集団は、おそらくハルキウ制圧のための攻勢作戦を成功させることはできないだろうとし、ロシアの第11軍団、第44軍団、第6軍団(いずれもレニングラード軍管区)の要素は、今後限定的な構成行動を取る、あるいは、ハルキウ州とスーミ州の国境隣接地域へと襲撃をかけることがあり得ると予想している。
ISWは、「ウクライナの交換は、ロシアのハルキウ制圧を目的としたあり得る攻勢作戦の脅威について以前に増して頻繁に警告している。ISWは、ロシア軍は同市制圧に必要な戦力が不足していると評価し続けている。しかし、ロシアのハルキウあるいはスーミへの攻勢作戦は、他の前線のより重要な地点からウクライナの戦力を引き離し固定化することになる」と伝えている。
ウクライナの攻勢に関して、ISWは、米国の高官が2025年のウクライナの新たな反転攻勢作戦についてシグナルを出し続けているとしつつ、他方でISWはウクライナができるだけ早く攻勢の主導権を再奪取すべきだと考えていると主張し、なぜなら2024年中はロシア側に主導権があることが同国にいくつかのメリットをもたらすからだと指摘している。
報告書には、「ウクライナが自国領を解放し、反転攻勢を行う能力は、西側、ロシア、ウクライナにおけるいくつかのまだ下されていない決定にかかっており、ウクライナの反転攻勢作戦に時間軸を押し付ける外からの努力は、戦場の現実を無視している」と主張されている。
これに先立ち、米国のサリヴァン大統領国家安全保障問題担当補佐官は4日、米国の軍事支援は2025年にウクライナが反転攻勢に転じるのに役立つとの見方を示していた。