モルドバ政府が国外追放した「スプートニク・モルドバ」のトップはロシアの情報機関将校=露報道

ロシアの調査報道メディア「インサイダー」は、モルドバ政府が9月13日に国外退去させた、ロシア国営プロパガンダメディア「スプートニク・モルドバ」のヴィタリー・デニソフ代表が、ロシア情報機関の将校であることが判明したと発表した。

16日、露インサイダーが特集記事を公開した

インサイダーは、デニソフ氏は、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の第54777基地である第72特殊サービスセンターの職員だと伝えた。このセンターは、外国の聴衆を対象に情報工作、偽情報拡散に従事している機関だという。

なお、記事によれば、デニソフ氏は、1967年に当時ソ連を構成していたウクライナのサポリッジャ州で生まれ、中等教育終了後、政治幹部や軍事ジャーナリストを育てるリヴィウ高等軍事政治学校に進学したという。

1992年、デニソフ氏は、独立ウクライナに忠誠を誓うことを拒否した上で、同様に拒否した人物と共に、モスクワへ向かっている。そこで、GRU本部の近くの将校用寮に入居したという。

インサイダーは、デニソフ氏は、ロシア国防省機関紙「赤星」で勤務し、そこで主に空挺軍の活動について記事を書いていたと伝えている。2005年には、同氏はモスクワでアパートと士官証明書(AA0014839)を得たという。

2013年には、デニソフ氏は、モスクワ州の総捜査局で勤務。インサイダーは、同氏がその時期どのような活動をしているかは明らかにできなかったと書いている。

その後、デニソフ氏は、第72特殊サービスセンターへ異動。2016年、空挺軍大佐の称号を獲得。2019年にロシアが占領するジョージア領の南オセチアにえスプートニクの編集長となっている。その後、バクーのラジオ局のトップとなり、2022年にモルドバ首都キシナウへ移動している。

これに先立ち、9月13日、モルドバ政府は、露国営プロパガンダメディア「スプートニク・モルドバ」の代表であるヴィタリー・デニソフ氏を内政干渉を根拠に国外退去させていた。

同日、ドゥミトル・ソコラン駐日モルドバ大使は、ソーシャルメディア「X」アカウントにて、「クレムリンが管理し資金提供している機関『スプートニク・モルドバ』の所長、ヴィタリー・デニソフ氏は、モルドバで10年間の望ましくない人物と認定された。今朝、モルドバからの移住局の職員らがロシア人ジャーナリストの邸宅を訪れ、車に乗せて国外退去命令書を持って空港まで連行した」と報告していた。

また、モルドバ政府は、2023年3月にロシア国営「スプートニク」関連の5つのウェブサイトを遮断している

EUとカナダは昨年、ロシア国営メディアのRTとスプートニクを域内での制裁対象としている。EU内では、スプートニクとRT(RT英語版、英国版、ドイツ版、フランス版、スペイン語版)の発信が停止されている。

米国務省のグローバル・エンゲージメント・センター(GEC)は、2022年1月に特別報告書を発表し、その中でロシア国営メディアの「ロシアの偽情報・プロパガンダ・エコシステムにおけるRTとスプートニクの役割」という名の報告書を公開している

日本では、「スプートニク日本」が日本語での発信を続けている。