ロシアの対ウクライナ戦争は欧州の目を覚まさせたが、欧州はまだ「ベッドから起き上がっていない」=EU上級代表
欧州連合(EU)のボレル外務・安全保障政策担当上級代表は、ロシアの対ウクライナ侵略は欧州にとって存亡の危機であり、欧州の多くの人々は目を覚ましたようだが、しかし、「ベッドからまだ起き上がってはいない」と指摘した。
ボレル外務・安全保障政策担当上級代表が、『「炎の弧」の中の欧州』という論考集の発表に際して、自身のブログにてコメントした。
ボレル氏は、「2022年2月以降、多くの人が、ロシアの対ウクライナ侵略が欧州にとってのモーニングコールだったと繰り返し述べている。しかし、政治学者イヴァン・クラステフは、数週間前、私の参加した討論において、目を覚すこととベッドから起き上がって行動することの間には違いがあると、的確に指摘した。思うに、欧州において多くの人がウラジーミル・プーチンの侵略で確かに目を覚ましたが、しかし、まだ本当のところはベッドから起き上がってはいないのだ」と発言した。
また同氏は、地政学的環境の悪化により、EU加盟国は自らの安全保障と防衛の発展に優先的な注意を払わなければいけなくなっていると指摘した。その際、過去数か月の出来事からして、欧州は危機の中にある、と表現した。そして同氏は、ウクライナから中東まで、南コーカサスからアフリカの角あるいはサヘルまで、紛争と危機は欧州の間近で増殖していると伝えた。加えて同氏は、南シナ海でも緊張が増大し続けていると喚起した。さらに、それら全ては、米国による欧州安全保障に関する将来のコミットメントがいよいよ不確実なものとなっていることを背景に生じているものだと強調した。
また同氏は、過去1年、欧州はウクライナの財政支援、人道支援、軍事支援を続けてきたとし、ロシアの(全面)侵略開始から、EUは450億ユーロの軍事支援を含め、その目的のために1220億ユーロを拠出していると伝えた。さらに、同氏は、EUがロシアの凍結資産からの収支を将来のウクライナ支援を保証するために活用することにも同意したことを喚起した。
同時に同氏は、「それにもかかわらず、私たちは、ウクライナの民間施設とエネルギー施設への絶え間ない空撃から身を守るための十分なリソースをウクライナに提供できていない。ウクライナの人々にとって、この冬は、大規模停電を伴う非常に厳しいものとなるだろう。私たちは、同国がドネツィク州でのロシア軍の進行を阻止し、失った領土を取り戻すための、特に弾薬面での、十分な支援をウクライナへ提供できていない。秋には、北朝鮮兵士がロシア側に直接参加し、危険なエスカレーションを引き起こし、それがこの紛争の国際化へ向けた非常に懸念を抱かせる一歩となっている」と訴えた。
その上で同氏は、「私は、ロシアの対ウクライナ侵略戦争がEUに対する存亡危機であると、すでに何度も述べてきた。もしウラジーミル・プーチンのロシアがウクライナで勝利を収めれば、特に欧州の他の隣国に対しても帝国主義的政策を追求することは必至である。そして、私たちはもう、そのような攻撃的政策の影響をジョージアとモルドバで見てきている。欧州にとどまらず、ウクライナの主権を守るための支援に失敗すれば、私たちが世界的に推進しようとしてきた世界のルールに基づく世界秩序が崩壊してしまうだろう」と強調した。