ウクライナ、モトール・シーチ社投資に関わる中国国民・企業に制裁発動
大統領府ウェブサイトに関連する1月28日付大統領令第29/2021が公開された。
同大統領令は、2020年12月14日に大統領令により発行された同日付国家安全保障国防会議(NSDC)決定に変更を加えるものとなっている。
同NSDC決定の第1追加文書によれば、中国籍の王靖(Wang Jing、1972年12月24日生まれ)に対して、3年間の制限措置が科される。
制限措置内容は、王靖氏の資産凍結(所有資産の運用権利の一時的制限)、通商オペレーションの制限、資産移動の制限・部分的・完全な停止、ウクライナ領内移動の制限、ウクライナ領外への株式持ち出し防止、有価証券に関わる法的行為実行の完全禁止、外国居住者への査証発行拒否・無効化、その他のウクライナ領入域禁止措置適用、経済主体の集中の禁止となっている。
第2追加文書では、スカイライゾン・エアクラフト・ホールディング社(英領ヴァージン諸島)、香港スカイライゾン・ホールディング社(香港)、北京スカイライゾン・アヴィエイション・インダストリー・インヴェストメント社(北京)、北京信威テクノロジー・グループ社(北京)の4社に対して、3年にわたる制限措置が科されている。
これに先立ち、2019年11月末、アイヴァラス・アブロマヴィチュス国営防衛企業(複合体)ウクルオボロンプロム社(当時)総裁は、中国スカイリゾン社がすでにモトール・シーチ社の株式を50%以上獲得していると発言。また、2019年12月13日、ヴヤチェスラウ・ボフスラウ・モトール・シーチ社名誉総裁は、記者団に対して、同社の株式を中国に売却したことを認めていた。
しかし、モトール・シーチ社の売却に関しては、米国政権が反対を表明。2019年8月、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(当時)は、キーウ(キエフ)訪問時、「私たちは、一般的に、中国側が、とりわけ米国で行っている、不正義かつ不公正な慣習についての警告と懸念を(ウクライナ政権側に)伝えた」と述べている。ボルトン氏は、その際、懸念の理由として、軍事技術の窃取を指摘している。
2020年9月4日、中国のモトール・シーチの株主たちは、ウクライナ司法省に対して、クレームを提出している。同文書では、35億ドル規模の損失について、ウクライナを国際調停裁判所にて提訴する意向が示されていた。
2021年1月15日、米商務省は、中国のスカイライゾン社に対して制裁を発動。ウィルバー・ロス商務長官は、その際、スカイライゾン社は中国側が主張するような民間企業ではなく、国営企業であり、中国側の「外国の軍事技術獲得・合法化の試みは、米国の国家安全保障と外政利益に重大な脅威を生み出している」と指摘、「その行為(編集注:制裁)は、スカイライゾン社と中国人民解放軍との直接のつながりに関係する輸出者への警告になるもの」と説明していた。
その後、中国スカイライゾン社は、MC-4社とともに、1月31日に航空機用エンジン製造企業「モトール・シーチ」社の臨時株主総会を開催すると発表していた。