ゼレンシキー大統領、モトール・シーチ社の外国への引き渡し可能性を否定
ゼレンシキー大統領が米ニュースサイト「アクシオス」に掲載されたHBO局へのインタビュー時に発言した。
記者が、米国では中国が地政学的脅威のトップだと考えられていると発言すると、ゼレンシキー大統領は、「私は、それに同意できない。なぜなら、ウクライナでは、私たちはそれを感じていないからだ」と返答した。
大統領は、「米国ビジネスは、ウクライナに進出している。しかし、同時に中国ビジネスも進出している」と発言し、「私は、国、民族を問わず、人々、ビジネス、国があなたに対して敬意を持って接し、あなたの民と国境を尊重するなら、彼らはあなたの国にプレゼンスを持つことができるのだと思っている」と発言した。
他方、ゼレンシキー大統領は、ウクライナの航空機用エンジン製造企業「モトール・シーチ」社をコントロールする株式パッケージを中国や他国が獲得することをは認めないと発言した。大統領は、「絶対に(認め)ない。私がいる間は、だ。私はここに生涯いるわけではないが、私が大統領職にいる間は、確実にない」と強調した。
これに先立ち、ウクライナは、1月28日付、大統領令により、航空機用エンジン製造企業「モトール・シーチ」社への投資に関わる中国国籍のビジネスマン王靖(Wang Jing)氏と、中国に位置する3企業、英領ヴァージン諸島に位置する1企業に制裁を発動している。
2019年11月末、アイヴァラス・アブロマヴィチュス国営防衛企業(複合体)ウクルオボロンプロム社(当時)総裁は、中国スカイライゾン社がすでにモトール・シーチ社の株式を50%以上獲得していると発言。また、2019年12月13日、ヴヤチェスラウ・ボフスラウ・モトール・シーチ社名誉総裁は、記者団に対して、同社の株式を中国に売却したことを認めていた。
しかし、モトール・シーチ社の売却に関しては、米国政権が反対を表明。2019年8月、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(当時)は、キーウ(キエフ)訪問時、「私たちは、一般的に、中国側が、とりわけ米国で行っている、不正義かつ不公正な慣習についての警告と懸念を(ウクライナ政権側に)伝えた」と述べている。ボルトン氏は、その際、懸念の理由として、軍事技術の窃取を指摘している。
2020年9月4日、中国のモトール・シーチの株主たちは、ウクライナ司法省に対して、クレームを提出している。同文書では、35億ドル規模の損失について、ウクライナを国際調停裁判所にて提訴する意向が示されていた。
2021年1月15日、米商務省は、中国のスカイライゾン社に対して制裁を発動。ウィルバー・ロス商務長官は、その際、スカイライゾン社は中国側が主張するような民間企業ではなく、国営企業であり、中国側の「外国の軍事技術獲得・合法化の試みは、米国の国家安全保障と外政利益に重大な脅威を生み出している」と指摘、「その行為(編集注:制裁)は、スカイライゾン社と中国人民解放軍との直接のつながりに関係する輸出者への警告になるもの」と説明していた。
1月31日、ザポリッジャ市にて予定されていた、航空用エンジン製造企業モトール・シーチ社の中国投資家やウクライナの実業家による「臨時株主総会」は、ウクライナの保安庁(SBU)捜査官が捜査を実施したことにより開催が阻止されている。
写真:大統領府