ゼレンシキー宇大統領、「ルールに基づいた国際秩序」を重んじる国々を平和サミットに招待
ゼレンシキー大統領が韓国主催で開催された第3回「民主主義のためのサミット」にオンラインで演説した際に発言した。
ゼレンシキー氏は、「ルールに基づいた現代世界の重要な柱は、壊されてはいないものの、残念ながら、弱体化している。世界は今、ルールよりも力に賭けている。しかし、力とルールは相互に排他的なものではない。『それか、あれか』ではないのだ。ルール違反を罰する力なくして、ルールは効果的とはならない。しかし、力を制限するルールがなければ、力は暴走する。それが、ロシアと共に生じたことである。力とルールのバランスが必要だ。そのようなバランスをウクライナは提案している。そこに、私たちの『平和の公式』(編集注:ウクライナが推進する10項目からなる露宇戦争和平案)の意味がある。ウクライナは、世界を大きい者と小さい者、より注意に値する者とそうでない者には分けない。私たちは、いわゆる大国や地政学的『極』の間に国々を分割するような植民地主義的世界観を否定する。全ての国に意味があるのだ」と強調した上で、ロシアの犯罪戦争を公正に終わらせ、公正が新しいグローバルルールとすることは、「グローバルサウス」抜きでは不可能だと訴えた。
そして、同氏は、「現在、私たちは、スイスにおいて第1回『グローバル平和サミット』を準備しており、あなた方皆、ルールに基づいた国際秩序を重んじる世界の全ての国を招待する。あなた方の声は重要だ。私たちは、暴走した力をルールへと強制的に戻さねばならないのであり、世界秩序の脆弱性を治療するべく、ルールを再び有効にするのだ」と呼びかけた。
また同氏は、ウクライナが提案する世界秩序へとルールを戻すことは、欧州にとっても、中東にとっても、アフリカにとっても、インド太平洋にとっても、世界の他の全ての場所にとっても重要な利益だと強調した。
そして、「それがウクライナのために、そして侵略国に反する形で機能するなら、それは皆のために、全ての侵略者に反する形で機能するということだ。私は、平和は堅固なものとなり得ると信じている。しかし、そのためには、世界の国々が堅固な信頼の共同創造者とならねばならない」と伝えた。
その他同氏は、ウクライナが実現する人道食料供給プログラム「ウクライナからの穀物」を喚起し、「これによって、すでに数万トンの穀物、小麦がイエメン、ソマリ、ナイジェリア、スーダン、エチオピアに届けられた。支援してくれているドナー国に感謝している。今、私たちは、国連世界食糧計画(WFP)と共に、ガザ、マラウイ、コンゴ民主共和国、その他の国の飢餓克服を支援すべく、『ウクライナからの穀物』プログラムのための新しいルートを構築している」と伝え、数日後にはスーダンにウクライナからの新しい貨物が届くと補足した。
その際同氏は、ロシアがウクライナの港を封鎖し、農業インフラを破壊し始めた時に、そのような結果を確保し、世界の食料安全保障を取り戻すことを支えたのは、世界の文明的な国々の共通の決断力とグローバルな協力だと強調した。
そして、同氏は、「私たちは、ロシアによる私たちの港の封鎖を解き放ち、私たちの農産物の供給を再開することで、グローバル食糧市場の安定性を回復した。すでに数千万トンのウクライナの食料がアジア、アフリカ、欧州に届けられている。私たちは、食料安全保障を回復することができることを証明したのであり、私は、本件や、私たちの『平和の公式』の他の全ての項目の実現へと皆を招待する」と伝えた。
なお、2月28日、国連世界食糧計画(WFP)は、戦争の続くスーダンに、ウクライナが人道目的で送った小麦が到着したと報告した。WFPは、この食糧支援は、スーダンの紛争の被害を受けている100万人の住民への配給食料の中核となるものであり、「この支援は、スーダンの飢餓危機の決定的な時に届いた」と説明した。
これに先立ち、2022年11月26日、ウクライナがアフリカ諸国の食糧危機克服を目的に主導するイニシアティブ「ウクライナからの穀物(Grain from Ukraine)」の立ち上げ首脳会談がキーウで開催され、20以上の参加国や欧州連合(EU)から計1億5000万ドルが集まったことが発表されていた。
なお、同イニシアティブには、日本政府も支援をしている。日本政府は2022年11月11日、ソマリアの深刻な食料危機に対する支援として、ウクライナ産小麦のソマリアへの輸出を通じた総額1400万ドルの支援の実施を決定したと発表。同年12月には、日本政府などの支援を受けた上で、南部のオデーサ海洋港から2万5000トンのウクライナ産小麦を載せた貨物船がソマリアへ向けて出帆していた。